銀河学校 2005

銀河学校 2005

日時2005/3/22 - 25
場所東京大学木曽観測所
対象高校生 30 名程度
担当者宮田、三戸、磯貝、藤原、米田、榎戸、森、丸山、内海

A班

A班では、「変光星を使って距離を求める」というテーマで実習をしました。 データ解析には解析ソフト「マカリィ」を使い、班の中で3人ずつ分担して行いました。 変光星(こと座RR型)の明るさや色を調べると共に、この変光星の特徴を使うことで 球状星団までの距離や球状星団の実際のサイズを求めていきました。

これから始まる実習へ向けての作戦会議 (A 班)
これから始まる実習へ向けての作戦会議 (A 班)

まず、球状星団M3、M53のV及びBバンドで撮った画像と、 その3時間後に同様のバンドで撮った画像、計8枚の画像の一次処理をしました。 時間をおいて観測した球状星団の2枚の画像を重ね、短時間で交互に表示する事によって、 球状星団の星の中で変光している星があることを確認することができます。 次に一次処理をしたM3(及びM53)のV、Bバンドの画像と、 3時間後のVバンドの画像をそれぞれ3つの領域に分け、分担して各々の領域の 星を約100個測光しました。この解析データから、球状星団における星の色と明るさの分布図(HR図)を書きました。 次に、Vバンドで撮った時間差のある2枚の画像の測光結果から、3時間前と後での星の明るさの比を出し、測光した星のどれが変光星であるか を定量的に調べ、作成した分布図中に印をつけていきました。この図から、こと座RR型変光星がどのような性質を持っているのかを考察しました。

次に、球状星団までの距離の測定です。一般的なこと座RR型変光星は、どの星でもある絶対的な明るさを持つことが過去の研究から分かっています。そこで、この絶対的な明るさと、観測したM3とM53におけること座RR型変光星の見かけの明るさとを比較することで、我々からM3、M53までの距離を計算しました。そして、求めた距離とそれぞれの球状星団の見かけの大きさから、実際にはどちらの球状星団が大きいのかを調べることができました。

発表会では、今回調べた距離とサイズから、M3とM53がそれぞれ銀河系のどの位置に、どのくらいの大きさで存在しているのかを、大きな模型を作って示しました。実習中より も少し緊張していたようですが、自分なりに分かった事を伝えようと、一人一人が一生懸命に発表していた様子が印象的でした。 

銀河の立体模型を使った球状星団の位置のプレゼンテーション (A 班)
銀河の立体模型を使った球状星団の位置のプレゼンテーション (A 班)

B班

B班では「銀河の構造を調べる」というテーマで実習を行いました。 銀河には色々な形や色のものがありますが、それらの違いは何を 意味するのだろう、ということを銀河の画像を解析して考えました。

まずは、近傍銀河の赤(R)・緑(V)・青(B)の三枚の写真をステライメージを使って 合成し、 銀河のカラー写真を作成しました。銀河の写真は合計六枚。楕円銀河、渦巻銀 河、レンズ銀河の三種類です。バイアスやフラットといった処理、スカイバックグラウンドの処理などを学びつつ、初日の夜から翌日にかけて、B班内部の三 班の班ごとに二枚ずつの画像が出来上がりました。

パソコンと格闘 (B班)
パソコンと格闘 (B班)

引き続いて、各銀河の中心から外部に向かって、赤・緑・青の色味がどのように 変化していくかを調べました。ピクセルごとの赤(R)、緑(V)、青(B)のカウ ントを読みとり、記録していきました。さらに「赤さ」(あるいは「青さ」)を表す 指標R/V、V/Bを計算し、銀河中心からの比率の変化を追いました。 これらのデータと星についての基礎的な知識をもとにして、銀河の形状と色との 関係、銀河内部での色の分布から、銀河と星の関係について何がわかるか議論し、 考察しました。発表では、班員で分担してOHPを作成し、三日間の成果について 全員で発表しました。

 指導者も身を乗り出して議論 (B班)
指導者も身を乗り出して議論 (B班)

「何かを見つける」という実習に比べて「数値データから意味のある情報を引き 出す」という作業では要求されるレベルは高く、高校初年度では難しく感じられ たかもしれません。とはいえ、研究やその先で行われている「科学的に見る」とい う営みの一端を体験できたのではないでしょうか?

C班

木曽シュミットカメラで撮像された3フィールド (銀河中心方向、銀径223度方向、北銀極方向)を題材に使いました。

 熱心なまなざしで友達の発表を聞く(C班)
熱心なまなざしで友達の発表を聞く (C班)

2バンドで撮像された各フィールド から星だと思われるものを画像解析ソフトマカリを用いてすべて手作業で測光しました。その数は6000個、測光回数にして12000個以上に及びます。この地道な作業の末、フィールド中のすべての星のカラーを決めることができ、太陽と同じ色であるG型星をすべて抽出することができました。G型星の絶対 等級はある程度決まっていますのでカウント値との間の関係が分かれば、星の明るさは距離の逆二乗則に従いますのでこれから距離を求めることが出来ます。 絶対等級とカウントの間の関係はヒッパルコスのデータと比較することで求めました。星までの距離が決まりましたので、単位体積で割ることで星の密度を求 めます。すると、距離-星の数密度グラフが指数関数にに従って減少していていくことが分かりました。銀河面の各方向で同じような結果を得てました。この 結果は銀河面内に星からの光を遮ったり散乱したりするダストが存在することを示唆しています。

測光画面(C班)
測光画面 (C班)

また、太陽型とも言えるG型星を探すことで、生命の存在する確率を算出しました。現時点で、銀河系には700ほどの知的生命が存在すると結論づけられました。

銀河系内の星の分布を巻物にして分かりやすく(C班)
銀河系内の星の分布を巻物にして分かりやすく (C班)

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