日時 | 2006/3/22 - 24 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 生徒27名 |
担当者 | 宮田、三戸、磯貝、米田、植田、鳥羽、橋本、田上、藤貫 |
2006年3月、まだ寒さの残る木曽観測所にて3泊4日の日程で第9回銀河学校が開催されました。参加者は長野から兵庫、東京まで各地の天文学に興味のある高校生。それぞれの思いを胸に、木曽福島駅からバスで観測所へと向かいます。これから、朝から晩までみっちり充実したスケジュールで、天文学にどっぷりと浸かってもらいます。
初日、まずは105cmシュミット望遠鏡の見学を行いました。これから観測に用いる望遠鏡に皆興味津々。熱心に説明に聞き入ったり、写真を撮ったりする姿も見受けられました。次の講義では「観望→観測→天文学」と題していよいよ天文学の考え方に触れていきます。恐らく初めて聞く内容も多い中、天文に関しての理解を深めることができたでしょうか。夕方からは興味のあるテーマで3つの班に分かれて活動が始まります。班の中で自己紹介を行い、一緒に観測する銀河を選ぶうちに、緊張も解けてうち解けた雰囲気になってきたようです。19時から行われる観測は天候頼み。様子を見ていましたが、雪が散らつき、今年は班ごとに観測できたりできなかったりが分かれる結果になりました。観測といっても実際に行う作業は、星空を見上げる訳ではなく、観測室で望遠鏡を操作するのみ。教わりながらマウスを動かしたり、数値を記録する作業が一天体30分ごとに行われます。"観測する"という作業に戸惑いを覚えた人は少なかったようです。晴れて観測に成功した最後の班では、夜3時頃まで観測が続けられました。
2日目は研究時間。ここから丸一日をかけて、3日目に行われる班ごとの発表にむけて準備を行います。昨晩取ったデータ(取れなかった班は予備データ)を用いての解析です。班内での実習や講義を交え、中間発表、データ解析、発表の仕方についての講義。発表の構想がまとまらず焦りつつ、深夜まで頑張る姿が見受けられました。
3日目、朝食後はいよいよ発表準備。班の中で内容を分担して、それぞれOHPシートに発表をまとめていきます。昼過ぎから、各班30分の発表時間。が、実際は質疑応答が盛り上がり、1班あたり約1時間の充実した発表会となりました。スタッフからの突っ込みに反論したり、考えさせられたり、ここで鍛えられた経験はきっと他でも役に立つことでしょう。発表が終わった後は夕飯、それからTAやスタッフの持ちネタ披露の時間が取られました。寝っ転がってホームスターで銀河を眺めたり、大観望会で星空の下カップヌードルを食べたり、発表が終わった安堵感もあって、和やかな交流が行われました。天文学をきっかけとして様々なひとが出会い、仲良くなれる不思議。ここで出会った人とまた違う場所で、違う形で出逢うことがあるかもしれません。銀河学校がまた新しい交流のきっかけになれれば、と思います。
4日目、いよいよ最終日です。スタッフによる最後の講演を聴き、名残を惜しみつつバスで出発。TAもそれぞれ帰路につきました。木曽の満天の星空(「プラネタリウムと同じ!」という、おかしい感想を言ってしまいそうになります。)から一路新宿へ。日常へと戻る中、街の灯りにかき消され、一等星すら見えない空を見上げて、時代が変わっても、星空を見上げる心を持つ人がいて欲しい、と感じました。銀河学校も来年で10回目を迎えます。宇宙や天文に興味を持っている人の興味関心を少しでも伸ばすことができていたら幸いです。
A班では、『壮絶なる星の死 ~死にゆく星の姿に迫る』と題しまして、A班をさらに3つのグループに分けて惑星状星雲を撮影・解析しました。
具体的には、次に挙げる6つの惑星状星雲を解析しました。
実際に生徒たちが撮影したのは、上の3つで下の3つは予備データを用いました。解析には、解析ソフト「マカリィ」を使いました。撮影では、「V」・「HαON」・「HαOFF」の3つのバンドを用いて各惑星状星雲を撮影し、マカリィを用いて各天体に対して画像処理を施すことで解析をする準備を行いました。
解析作業では、各惑星状星雲の年齢を求めることから始まり、その後グループを再編成して核の様子を調べたり、カラー画像を合成してカラー写真を作ったり、形状を調べたり、質量を求めたりと予想以上に解析には熱が入り、各グループ真剣に課題に取り組んでいました。始めはどのグループも自分たちの中だけで作業をしていましたが、そのうち他のグループの解析データがないと解決しない問題が発生し、最後はグループの枠を超えてA班が一丸となって作業する姿はまさに「研究」でした。3つのグループが一つになることで一グループだけでは知り得なかった情報が次々に出てきてひとつのテーブルを囲んで活発に議論する様子はとても印象的でした。発表の準備もそれぞれ役割分担をし、短い時間の中でも自分たちの研究成果をまとめようと奮闘している生徒たちがいました。
発表では、大きな紙にまとめた各惑星状盛運の情報(年齢・明るさ・質量などなど)を基に、OHPを用いて発表しました。
全体的に高度な課題だったとは思いますが、それでも一生懸命に協力して研究する今回の銀河学校は生徒さんたちにとってきっと大きな財産になったと思います。中には追求しきれなかった部分もあるようで「もっと研究したい!」といった様子の子もいてとても頼もしく感じました。
B班では、「星と星雲」について実習、観測を行いました。
対象天体は、バラ星雲・馬頭星雲・モンキー星雲・オリオン星雲の美しい星雲です。観測の方は、天候が悪く、数枚しか撮像できませんでした。その後、予備データを使用して、3班にわかれ、それぞれの星雲を1つずつ担当し、マカリィによる1次処理をしました。その後、ステライメージによる三色合成をしました。図鑑などで見たことのあるような星雲を自分達で完成させたことにとても感動していました。完成した画像をみんなで丸くなって、感じたことや考えることを話し合いました。最初のうちは、発言も少なく、発言に対する言葉も少なかったのですが、話し合っているうちに言葉が行き交うようになったのは、とても印象的でした。この後は、Hαについて学び、Hα―Hαoffの画像を作りました。ここからは、テーマの「星と星雲」の違いや共通点について話し合いました。「これらの画像から何がわかるのか?」話し合いでは、疑問に思った事をすぐに教えてしまうのではなく、班全体で考えました。わかることは、教えあい、わからないことは、一緒になって考える。この話し合いを通して、班は一丸になったと思います。この後は、HRの図を作り、より深い考察をしました。
B班では、実習を班全体で考えて、意見を言い合うことができたことができたことがよかったです。最初は、とまどいがあったかもしれませんが、なかなか味わうことのできない貴重な経験になったと思います。
C班では『星の生まれ故郷を探せ! ~星の出生率を求めよう~ 』と題して実習と観測を行いました。
目的は、系外銀河の星生成領域が渦巻銀河の渦に沿って存在することを確認、それぞれのHα線輝線強度から星生成領域内に含まれる早期型星の個数を計算し、出生率を求めることです。データ処理はirafを一次処理に、マカリィを測光に用いました。対象銀河は渦巻銀河。まずはHαや電離領域、HⅡ領域と早期型星についての講義を受けて理解を深めた後、実際のデータ処理へ。一方105cmシュミット望遠鏡を使って、実際にM101、M51、M81を観測しました。データ処理では天体画像の一時処理でバイアス引き、感度補正を行った後、Hα抽出のため画像のシフト、合成を行いました。その後得られた画像からHα輝線強度(カウント)を測定、計算を行い早期型星の個数を求め、知られている寿命から出生率を算出しました。
C班ではパソコンに向かって行う作業が中心となります。irafやマカリィといった扱い慣れないソフトも、実際に手を動かしているうちに方法を学び、講義の理解も深まったようです。出生率を算出した後は「中心からの距離と出生率の関係を調べる」等の考察に頭を悩ませ、議論は深夜、また発表直前にまで及びました。最終日の発表では、OHPを用いて役割分担をして全員で二日間に渡って行った内容を報告。参加者同士で質疑応答が盛り上がる様子が見られました。普段の学校では経験できない体験を経て、天文学の初歩、また科学的な研究の大変さと面白さを垣間見たのではないかな、と思います。