銀河までの距離をどう求めるかについて…

長野県立伊那北高校高校星の教室

日時2007/7/7 - 8
場所東京大学木曽観測所
対象伊那北高校 40名
担当者青木す、渕

木曽観測所で開催される星の教室、2007年度第一弾は伊那北高校でした。 観測所に到着後、木曽観測所副所長の小林尚人氏の挨拶およびスタッフの自己紹介を 行い、いよいよ星の教室のスタートです。

【一日目】

最初は宇宙の講義。太陽系スケールから銀河、宇宙の構造にいたるまでの概要を国立天文台研究員の板さんが解説しました。高校1年生ではまだ聞いたことがない話も多くあったかもしれませんが、おおよその概要は理解してもらえたかと思います。その後、木曽観測所105cmシュミット望遠鏡を見学しました。望遠鏡を見ながら観測所の征矢野氏による解説がありました。高校生たちにとってははじめて見る大きな天体望遠鏡、強い印象をもってくれたのではと思います。

今回の星の教室の目標は宇宙の年齢を求める、です。が、その前準備として視角という量について学びます。これを実習1で行いました。目や写真に写る物の大きさは、長さの単位ではなく角度の単位で測ることを実際に身体を動かして実験します。野外での実習では写真に写った大きさと身長から距離が求められることを確認できました。この実習はTAの渕が担当しました。

視角を実際に求める実験では…
視角を実際に求める実験では…

次の実習2では、人の代わりに銀河までの距離を求めます。最初にTAの青木からPCの使い方や銀河の画像の印刷方法などを聞き、そのあと生徒が実際に挑戦します。銀河画像はプリントアウトしてものさしで測定、電卓をたたいて距離を求めます。なれない単位(Mpc)でたいへんですが、がんばって15個以上の銀河の距離を求めました。

最後の実習3ではいよいよ宇宙の年齢の決定に挑戦です。ここでは、多くのヒントは出さず、自分たちの力で考えさせるようにしました。生徒たちの間で特に問題になったのは、宇宙の中心が地球なのか、という点でした。また幾つかの班では、宇宙の果てはどこか、どういう場所を果てと呼ぶべきか、についても議論が起きていました。これらを踏まえて宇宙の現在・過去・未来についても考察が及びました。

悪かった天気も夜半には回復し、少しだけですが観望会も実施できました。星空を見られた高校生たちはたいへん喜んでいたようです。

【二日目】

二日目は発表準備と発表会です。各班で考えをまとめていく過程は非常に重要なものです。特に宇宙の問題は普段はなかなか話ができないものなので、高校生にとってはたいへん有意義な時間です。各班とも議論に議論を重ね、最終的には自分たちで納得できる「宇宙の年齢」が出せた様子でした。

得られたデータから距離-後退速度図を描くと…
得られたデータから距離-後退速度図を描くと…
その質問の答えとしては…
その質問の答えとしては…

最後には再度板さんから今回の実習内容のまとめの講義を受けました。結果の数字ももちろん大事ですが、計算や議論などの過程を経験することもこの星の教室の重要なポイントです。その意味でこの星の教室は充実したものだったと思います。参加した皆さんには今後もこの経験を活かして科学に興味を持ち続けてもらえればと思います。

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