島根県立松江北高校出前授業

島根県立松江北高校 出前授業

日時2008/10/24
場所島根県立松江北高等学校
対象理数科2年生 計152人
担当者藤原、金澤、宮田(英)、佐々木、深瀬

島根県立松江北高校において「総合学習」の時間に3講座を開講させていただきました。各講座ではテーマに沿った内容だけでなく、普段知られることのない研究者の生活や大学・大学院での生活についても触れており、生徒の皆さんは熱心に講義を聴いていました。以下、開講前のインタビューと各講座の様子を紹介します。

開講前:「松江北高校の生徒さんによる紹介用インタビュー」

授業を行う前に控え室で待機していると松江北高校の生徒さんが数人、授業前に講師の紹介をするとのことで講師の3人にインタビューをされに控え室を訪れました。インタビューは20分ほどで終わりましたが会話が絶えることはなく、講師に対して次々と質問している生徒さんが印象的でした。質問内容を聞いていると研究内容やそのきっかけ、また大学受験に関する質問などもあり、生徒さんには講師が「先生」ではなくどちらかというと「先輩」の様な近い存在として感じられているようでした。

授業前のインタビュー
授業前のインタビュー
生徒さんによる紹介
生徒さんによる紹介

講座名:「コンピュータとは?~基本的な仕組みから最新技術まで?~」

講師:金澤 慧 (東北大学工学部機械知能・航空工学科)

「コンピュータとは?~基本的な仕組みから最新技術まで?~」というテーマで東北大学の金澤慧さんに講義をしていただきました。

金澤さんの講義<
金澤さんの講義

インタビュー内容を元にした生徒さんによる講師の紹介から始まり、金澤さん自身が大学について簡単に紹介をしました。生徒さんにとっては進路について考える機会にもなったことと思います。

今回の講義はコンピュータについて概要をお話し、演算の仕組みなどを知っていただいた後で、実際にコンピュータを分解して中身を見て頂きました。小さなノートパソコンの周りに参加者全員が集まると、取り外されたキーボードをグニャグニャと触ったり、心臓部のCPUが取り出されると皆さん興味深げに見つめていました。普段何気なく使用しているコンピュータが一体どのような構造をしているのか、実際に目にすることによって生徒の皆さんに知っていただく良いきっかけになったようです。

取り出されたCPU
取り出されたCPU
キーボードを触ってみると
キーボードを触ってみると

最後に、最近のコンピュータ事情についてと、科学についてお話をしていただきました。コンピュータ技術の応用例としては、講師の方が大学で専攻をしている航空宇宙分野について、具体例をたくさんあげて説明をしました。専門的なお話でしたが、高校では勉強をしない授業内容が新鮮で面白かったようです。科学については、やりたいことを見つけたら一つの分野や技術にだけにこだわるのではなく、関連することをたくさん学ぶという姿勢について伝えていました。生徒の皆さんが将来の職業について考えていく時に、何かのきっかけを与えられたと思います。

講座名:「第2の地球の探し方―あなたの知らない太陽系の向こう側―」

講師:藤原 英明 (東京大学大学院理学系研究科天文学専攻)

「第2の地球の探し方」というテーマで東京大学大学院の藤原英明さんが授業を行いました。太古から皆誰しもが一度は抱いてきた「私たち以外に生命は存在するのか?」という問いに対して、天文学がどのようにアプローチしているのかについて、簡単な計算式などを通して生徒さんにわかりやすく話されました。

藤原さんの講義
藤原さんの講義

まずはいきなり本題には入らず、自身のことも交えながら天文学者がどのようなことしているのかについて簡単に紹介されました。天文学者の仕事についてはあまり知られていないこともあってか、かなり興味を惹かれていたようです。

そして簡単に宇宙の構造に触れたあと、本題の地球外生命の話に入りました。ここでランク・ドレーク博士の「ドレークの式」が紹介されました。ドレークの式は「通信が出来るほどの文明社会を持つ星の数を見積もる式」として提唱され、実際にはかけ算しか使わず入れる数字もある程度自由に決められるというおもしろい数式です。そしてこの数式を使って生徒の皆さんそれぞれに文明社会を持つ星がどれくらいあるのか計算してもらいました。

各生徒さんの結果が出たところで藤原さんが生徒さんとやりとりをしながら式に数字埋めていきます。生徒の皆さんは自分の計算結果が藤原さんの結果と比べてどうなのか気になっているようで、盛んに藤原さんとやりとりしていました。ちなみにここでは500個という数字となり、方々で「多いなあ」など自分の計算結果と照らし合わせて生徒同士で話していました。

次に、ドレークの式で必要だった「惑星の数」に焦点を絞って惑星探査について話がりました。先ほどのドレークの式では自由に考えることが出来ましたが、今度はがっちりとした理論に基づいた惑星探査方法に触れてられました。複雑なグラフや聞き慣れない言葉があったにも関わらず、写真や映像、アニメーションを交えた視覚的なスライドのおかげで生徒の皆さんにわかっていただけたようです。

最後にまとめとして現在までにどれだけの惑星が見つかっているのかなど惑星探査の現状にふれ、第2の地球探しが決して突拍子も無い絵空事ではなく天文学として進展していることが紹介されました。

質問時間には、生徒さんからは大学院での生活についての質問が多かったように感じます。やはりこれからの進路などのこともあるかもしれませんが、純粋に気になっている人もいたようです。またドレークの式について部屋の後ろで先生方が思い出したようにペンを走らせて話し合っていたのも印象的でした。

ちなみに授業が行われた部屋には机や椅子が無いため生徒さんが敷かれたござの上に腰を下ろす形で授業を行いました。藤原さん自身このような環境で授業をすることが初めてで、生徒の皆さんもこのような形式で授業を受けるのに慣れていないせいか最初はとまどった様子でした。しかし椅子等が無い分、気楽な姿勢で授業を聞くことが出来たようで講師と生徒さんの距離が縮まる良いきっかけになったようです。

講座名:「見えないけれど確かにある!!“電波の世界”」

講師:宮田 英明 (早稲田大学理工学部応用物理学科)

「見えないけれど確かにある!!“電波の世界”」というテーマで、早稲田大学の宮田英明さんに実習を通して講義をしていただきました。

宮田さんの講義
宮田さんの講義

講義はインタビュー内容を元にした生徒さんによる講師の紹介から始まりました。その後、日常における電波の話や、誘導電流の簡単な実験を生徒さんにお見せしました。学校で学習をしたことを思い出しながらその原理を理解していただけたと思います。実習では、電磁誘導の原理を用いた簡単なアンテナを作成しました。実際に手を動かして実験道具を作成するということが、生徒さんにとってとても良い体験になった様でした。作成後は、アンテナを用いてどのようなものから電波が出ているのかを自身で教室内を移動して探していただきました。教室内にはテレビや電子レンジが予め用意してあり、それらの電気製品を使用してもらうことで、目には見ることができない電波の世界があるということを感じていただきました。生徒の皆さんは日常生活に電波がこんなにもあるのかと、とても驚いているようでした。

最後に授業のまとめとして、電波が科学にどのように応用されているのかを、大学の研究について交えながらお話していただきました。様々な波長でみた天の川の画像を紹介した時には、生徒さんそれぞれが持っていた天の川のイメージと大きく異なった画像に興味津々のようでした。今回の講義を通して、科学の面白さとそれに対しての興味を持っていただけたと思います。今後もその気持ちを忘れないでほしいです。

電波を聞いてみる
電波を聞いてみる

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