日時 | 2009/11/28 - 29 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県伊那北高等学校理数科 生徒40名、教師2名 |
担当者 | 猿楽、金澤、山村 |
開校式の後、炭素原子から始まり宇宙の大規模構造までたどり着くスケールの講義が行われました。Mitakaを用いた宇宙構造の話は高校生もぐんと引き込まれていました。 ドーム内の見学では、シュミット望遠鏡の大きさに圧倒され、ドームや望遠鏡が動くたびに歓声が上がっていました。
本館に戻ると、いよいよ本題に入ります。視角から距離を求めるという実習1では、外が寒いにもかかわらず「ポールが斜めだからもう一枚!」など、積極的に実験する姿が目立ちました。計算も素早く、あっという間に視角距離と実測距離のグラフを書きあげていました。2つの誤差については、「平均身長より低いから上にずれている」など、鋭い意見も出ました。
銀河の画像から距離を計算する実習2では、グループ内で上手く協力している姿が見られました。見やすい銀河ばかりでなく銀河かどうかわからないような画像まで、バラエティに富んだ銀河を選んでいました。早く終わってしまった班は、目標の15個以上の銀河を計算しており、中には22個、18個な どという班もいました。
それが終わると、いよいよ宇宙の年齢を求める実習3に入りました。距離と後退速度の関係をグラフにプロットし、そこからどんなことが読み取れるか各班一生懸命悩んでいました。グラフに直線を引き、比例関係にあるということが分かると、「確かビッグバンがあって…」「後退速度は宇宙の中心からでなく地球からだから…」と、議論は白熱していきました。
10時になると、観望会が始まりました。とても寒い中、オリオン座やふたご座など季節の星座や月を見ました。地面に寝転んで「流れ星を見る!」と頑張っている生徒もいました。その後は食堂で楽しく遊んだり、勉強したりと、みんなで夜更かしをしました。
朝、眠い目をこすりながら前日の議論の続きを始めました。議論はなかなかまとまらず、発表会の開始時間が少し伸びることになりました。ギリギリの時間にスライドが完成する班もあればスライドに絵を描く余裕がある班など、班によって差が出ましたが、どの班も自分たちなりの宇宙年齢とその考察をしっかりまとめることができました。
発表では、銀河を形ごとに分けたグラフや宇宙膨張のモデルなど、とても面白い内容ばかりでした。質問も活発に飛び交い、毎回「まだまだ質問はあるけどそろそろ次の班の発表に。」といって質問が打ち切られるほどでした。発表内容がちょうど前の班の質問と重なるなど奇跡のめぐり合わせが続 き、それぞれの班の発表はもちろん、全体としても一つにまとまっていたような美しい発表会になりました。
このあと、実習内容を踏まえた講義がありました。最新の研究で求められた宇宙年齢も発表され、自分たちの求めた年齢に近い班は喜んでいました。小麥さんからの「君たちは料理を作っています。発表会が終わった今は材料を切り終わった段階です。この講義をスパイスに、焼くなり煮るなりして美味しく料理してください。」という深い話で今回の実習は幕を閉じました。
今回の実習で行った、自分たちで1から考察して考えていくという作業によって、生徒たちは研究の難しさや面白さを体験することができたのではないかと思います。今回のように自分の考えをまとめる、それを相手に伝えるということが、今後必要となる時が来るでしょう。この体験を忘れずにいてほしいと思います。