授業風景

島根県立松江北高等学校出前授業

日時2010/11/12
場所島根県立松江北高等学校
対象松江高校普通科理系2年生
担当者浅見、鳥羽、高橋、武田、青木、村仲

講義名:「星空の向こう側には何がある?~クエーサーを探して初期の宇宙を探ろう~」

講師:浅見奈緒子(日本教育大学院大学専任講師)

浅見は宇宙の過去について、また、クエーサーという天体について授業を行いました。

当日の星空の紹介があり、天体シュミレーターソフトMitakaを用いて太陽系と銀河系との位置関係の説明がありました。生徒さんは銀河系を画面いっぱいに表示したときに、地球が小さすぎて見えない様子に、驚いていました。また、私たちが見ることができる天の川も、赤外線や、エックス線で観測すると全く違った様子に見えることが紹介されました。

次に、宇宙の始まりはどうなっていたのか説明がありました。宇宙は膨張していていることについて紹介され、私たちが観測する星の光がドップラー効果によって赤くなる赤方偏移やハッブルの法則について説明がありました。宇宙のイメージをするために、風船に点を書いてこれを膨らませてみる実験を行いました。生徒さんは、宇宙の膨張についてイメージができ、宇宙に対して親近感がわいたようでした。

宇宙の膨張をイメージしてみよう
宇宙の膨張をイメージしてみよう

講義名:「銀河鉄道の昼~銀河に恋してみませんか?~」

講師:鳥羽儀樹(総合研究大学院大学物理科学研究科 宇宙科学専攻)

鳥羽は銀河について、過去の研究者がどのように銀河系を発見したか、また銀河の種類や銀河が群れをなしていることについて授業を行いました。

天体観測では、観測される光を分光することによって、その天体の温度や運動状態が分かること、また可視光ばかりではなく、様々な波長の光、電波を用いることが紹介されました。さらに天文学では、AUやpcといった単位を用いることが紹介されました。そして、天体シュミレーターソフトMitakaを用いて地球が銀河系のどの辺に位置しているか実演がありました。

地球か見ることができる天の川は、夏見えるのが銀河系の中心方向で、冬見えるのが銀河の外側であると知られているが、どのようにして地球は銀河系のなかに属していることを発見したのか、過去の天文学者が観測した方法について紹介されました。

また、天文学が発展する過程の中で太陽系は銀河系の周りを回っていることが紹介されました。ここで、太陽系が銀河系の周りを1周するのに何年かかるか、また太陽系はこれまで銀河系の周りを何周しているかについて生徒さん各自に計算してもらいました。生徒さんは普段使うことの少ない桁の多い数字に若干戸惑っていたようでした。

最後に銀河は銀河系のほかにもあり、様々な形に分類できることや活動銀河という天体があること、さらに銀河は群れをなして活動していることについて説明がされました。

太陽系は銀河系を何周しただろうか?
太陽系は銀河系を何周しただろうか?

講義名:「虹を作って第二の地球を見つけよう!

講師:高橋 安大(総合研究大学院大学 物理科学研究科 天文科学専攻)

高橋の授業では、光について、また、分光によるスペクトルからどんなことが分かるのか、天文学での実用例なども盛り込んだお話がされました。光について一通り理解した後、分光器をつかった分光実習として、 まず生徒さんひとりひとりに分光器を作成してもらいました。自らが作成した分光器で実際に太陽光、蛍光灯、ナトリウムランプなどの光を見てスペクトルの違いを比較するという内容でした。 用意されたキットで黙々と集中して分光器作りに取り組み、完成した分光器を手にスペクトルを見て興奮する生徒さんの様子がとても印象的でした。

光やそのスペクトルがどのように「第二の地球」探しの役に立つのかという後半の講義の内容も、様々な光のスペクトルを実際に観察することにより、光で物質の温度や種類を見ることが出来るという分光器の実習で 実際に体感したことによって、生徒さんにとってより解かりやすいものとなったようです。今回の講座高校物理で習う基礎がどのようにして最新の研究に応用されているか認識できるものだったと思います。

講義名:「生命の不思議に迫ろう~ハエの求愛行動を科学する~」

講師:武田 麻子(東北大学大学院 生命科学研究科 脳機能遺伝分野)

武田の授業では、前半は主にブラックボックスを通じて科学の考え方と流れを紹介、後半は武田さんが所属されている研究所で研究されている、ショウジョウバエの求愛行動とそれに関わる遺伝子について紹介をされました。

前半は、中の状態がどうなっているのかわからない黒い箱を各班一個ずつ、箱を開けずに中身がどういう様子になっているのか調べました。最初に個人で調べ、次に班内で話し合いを行い、最終的に班で出した結果を他班に発表するというステップで実習授業は進みました。この実習を通して武田さんは、科学とはブラックボックスの中身を調べることと同じで未知のものを様々な方法で調べていくことであるということを伝えました。また、個人で調べることも、グループで話し合うことも、調べた内容を発表することも科学の進歩において非常に大事なプロセスであるということをお話されました。

また、後半のショウジョウバエの求愛行動とそれに関わる遺伝子については主に求愛行動に関わる遺伝子を探すというテーマで授業が進められました。研究対象としてのショウジョウバエの利点や研究のプロセスについてお話されました。実際にショウジョウバエの幼虫・サナギ・成虫をみると生徒さんたちは積極的にそれらを観察し、質問している様子が多く見受けられました。授業全体を通して科学とは何か、新しい真実を見つけるにどのようなプロセスを踏まえながら研究が進められているのかを学んでいただけたのではないかと思います。

ブラックボックスの中身は何だろう?
ブラックボックスの中身は何だろう?

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