日時 | 2010/8/17 - 18 |
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場所 | 長野県総合教育センター(塩尻市) |
対象 | 野沢北高校1年生(理数科)39名 |
担当者 | 三戸、鳥羽、藤貫 |
長野県総合教育センターにて、1泊2日の日程で野沢北高校の理数科の1年生の 生徒を対象に星の教室を開催しました。このプログラムでは、天体写真を元に天 体の色と明るさについて考察していきます。
初日は天文に関する初歩的な講義と実習説明を行い、観望会を交えて、星の色と 明るさのグラフ作成を目標に実習を進めていきます。
初めに、『天体の観測 -天体の色と明るさ-』と題して、夜空に見える身近な天 体の紹介から、観測によって星の明るさと色を数値化する方法を学びました。明 るさについてはCCDカメラを使うと数値化できることを学習しました。色について は、白黒CCDカメラに決まった色の光だけを通すフィルターを取り付け、二色の明 るさの比を取ることで求められることを学習しました。身近なデジタルカメラの 仕組み等を踏まえながら、天体の観測について理解を深められたでしょうか。
次に、実習1で画像解析ソフトマカリィを用いて、画像データである天体写真か ら星の明るさを測定する作業を行いました。画像データ、測光の仕組み・注意点 、測光方法についての講義の後、班ごとに3つの天体(球状星団、散開星団、普 通の夜空)についてそれぞれ2つのフィルターを用いて測光を行いました。測光 作業については、1人1台パソコンが使用できたため、1人ずつ手を動かして注 意深く測光を行っている姿が印象的でした。初めて扱うソフトながら、講義で学 んだ原理を思い出しながら測光方法について議論している班もあり、手を動かし 、考えながらそれを楽しんでいる様子が伺えました。
最後に、実習2では実習1の測光データを元に、星の色と明るさのグラフ作成を 行いました。フィルターを利用して星の明るさの比を求めることで星の色を求める原理を復習し、 2つのフィルターでそれぞれ測光した明るさの値から、計算によってそれぞれの星について 色を求めていきます。データからは、縦軸を明るさに、横軸を色としたグラフを 作成、方眼用紙に1つ1つの星の値をプロットしていきます。グラフは、1つの 天体について、データの全てを含むものと、傾向を読み取るためにデータが集ま った領域を拡大するものの2種類を作成しました。
合間には、長野県総合教育セ ンターにある50cmの望遠鏡を利用しての観望会も行われました。あいにくの曇り 空で、観測としては時折雲の合間から顔を見せる月の表面を見ただけでしたが、 望遠鏡を通して見えるクレーターに感動し、携帯で写真を撮る姿も見受けられま した。また、観測後は解散・消灯となりましたが、班での作業を持ち帰って行う 熱心な生徒もいたようです。天体写真からのグラフの作成に加え天体観測と、天 文尽くしで思い出に残る一夜になったのではないでしょうか?
二日目は、一日目に作成したグラフからの考察、及び発表を行いました。
班内でそれぞれグラフを作成した後、それぞれのグラフについて何が読み取れる か、3つの天体の比較から何が言えるか、議論を重ねていきます。グラフ作成ま ではスムーズでしたが、グラフの意味の読み取りについては苦戦している班が多 かったようです。発表に向けて少しずつヒントが出される中、グラフから星の色 と明るさに関係が見られる球状星団を糸口に、星の明るさや色、距離との関係な どについて少しずつ、言える事は何か考えを深めていきました。
まとめとして、グラフおよび考察について、班ごとに発表を行いそれぞれの考え を話し合いました。短い時間ながら、グラフとそこから考えられる内容を元に、 天体同士の関係について仮説を立てる班もあり、発表では生徒同士の質問や議論 も行われました。
最後には、今回作成したグラフの参考にと、高校の地学の教科書から現在知られ ている知識の引用の講義もなされました。今回の実習で天体写真から作成したグ ラフとは完全に同じではありませんが、同様の縦軸・横軸で表される図が教科書 に掲載されていたのは驚きをもって受け止められていたようです。今回の操作が、 かつての天文学者と近い思考で行われていることに気付き、追体験をする面白さを 感じてもらえたら、と思いました。
天体写真といえば、天文学の成果の中でも一番身近で、かつ綺麗で親しみやすく 感じられますが、画像解析ソフトを用いて写真画像からデータの数値化を行う今回の実習を通して、 夜空を見上げ星を眺める観望だけでなく、観測と数値化を通して天体について読み解こうとする天文学へも関心を 持ってもらえたらと思います。