島根県立松江北高校 出前授業

島根県立松江北高校 出前授業

日時2011/10/14
場所島根県立松江北高等学校
対象理数科の 2 年生 149 名
担当者鳥羽、金澤、藤井、佐々木、安江、浅岡、村仲

概要

島根県立松江北高校において「総合学習」の時間にさまざまな視点から見た天文分野について、その道を志す4名の大学院生が90分の授業を行いました。

各授業では、実習や実験が取り入れられており、聞くだけの授業とならない工夫がらされています。また、生徒があまり知ることのできない大学生活についての話題も盛り込まれています。 以下に各講座の詳細を記していきます。

授業 1: 光で探す第2の地球

(講師: 佐々木 彩奈 / アシスタント: 安江 紗那子)

授業は、佐々木自身がどのような研究をしているのか、天文学に興味を持ったきっかけなどを紹介し、“地球のような惑星はどのようにしてできたのか”と、問いが提起されて始まりました。惑星が誕生する過程を説明した後、地球以外にも惑星が多く存在することから、“宇宙にも生命がいてもいいのでは”と問いかけがあり、通信ができるほどの文明社会を持つ惑星の数を見積もる「ドレークの式」を説明し、実際に生徒に計算してもらいました。ここで、宇宙生命の可能性を生徒たちと共に考えることができたと思います。 休憩を挟んで授業の後半では、ドップラー効果と惑星の食という二つの系外惑星の探し方を紹介しました。ここでは、論文や最新の研究結果などにも触れ、普段みることのない論文や研究に生徒も興味を示しているようでした。 授業の終盤では、円盤についての話になりました。天文学では、惑星は円盤から形成されることが考えられているため、惑星の生い立ちを知る為には、形成過程の円盤の性質を知る必要があります。その円盤の研究手法の1つとして、光の偏光を用いて観測が行われているという話をしました。そして光の「偏光」という性質を実感してもらうために、実際に偏光板を使って、光の「偏光」を身近なもので体感する実習を行いました。普段見慣れているものが、偏光板を通してみると違った姿をみせるということに、教室のいたるところで歓声が上がっていました。この実習・講義を通して、科学や宇宙の不思議、おもしろさを体験していただけたと思います。

佐々木講義風景
佐々木講義風景

授業 2: 銀河鉄道の昼〜あなたの心にビックバン〜

(講師: 鳥羽 儀樹 / アシスタント: 浅岡 宏光)

銀河系や銀河について、鳥羽が講義を行いました。講義の序盤では天文学の基礎的なお話をし、我々が済む銀河系の話をしました。また、講義の中盤で は銀河系の回転周期に関する演習問題を行い、生徒達は普段扱わない桁数の大きな指数計算に戸惑いながらも鳥羽のヒントを元に答えを導き出していま した。さらに、講義の終盤ではさまざまな銀河の写真や宇宙の大規模構造のシミュレーションの映像を交えながら銀河の話をしました。きれいな写真や 動画に生徒たちは特に深く見入っているようでした。 生徒達は天文学について知った上で、銀河に興味を持たれたようです。

鳥羽講義風景
鳥羽講義風景

授業 3: 紙飛行機から宇宙へ!

(講師: 金澤 慧 / アシスタント: 村仲 渉)

身の周りにある飛行機には、戦闘機、旅客機、小型機などといったものがあり、これらの飛行機の速度や飛行距離などは各飛行機の形から類推する事ができることを航空力学を背景に紹介されました。そのあと、生徒は3人1組になって航空機の抗力に対して揚力の比がより大きくなるような紙飛行機を作成しました。実際の航空機製作では、何種類もの試作機を作り何度も試験飛行をすることができないことに倣い、使える紙の枚数や試験飛行の時間に制限を設け、先の航空工学の知識を生かした設計を体験しました。生徒は試行錯誤しながら紙飛行機を作成していました。最後に行われたコンテストでは、多くの生徒が目標としていた揚力と抗力の比を超えることができず、紙飛行機よりもはるかに重い飛行機の方が自分たちの作成した紙飛行機よりも性能がよく、遠くへ飛ぶことができることに驚いていました。

金澤講義風景
金澤講義風景

授業 4: 現代天文学で探る宇宙の形

(講師: 藤井 宏和 / アシスタント: 浅岡 宏光)

宇宙の形について、理論・観測面から藤井が講義を行いました。 まず、今年の全国高校生クイズにて出題された「宇宙の大きさを計算しなさい」という問題を紹介、その背景を解説し、生徒に実際に解いてもらいました。そして、この結果は「観測可能な」宇宙の大きさを求めただけであって、「真の」宇宙の大きさとは無関係であることを説明し、本題に入りました。 準備として、音の高さと波長の関係、ひいては音色と楽器の大きさとの関係を思い出してもらい、小さな楽器からは低い(波長の長い)音が出ないことを確認してもらいました。その後、宇宙には宇宙マイクロ波背景放射という光が満ちており、これはビッグバンの時に宇宙が発した「音」に相当することを紹介しました。米国NASAのWMAP衛星による宇宙マイクロ波背景放射の「音色」の観測データを見てもらい、波長の長い光が少なく、これは小さな宇宙を示唆すること、そのような宇宙の形の候補としてポアンカレ12面体が挙げられていること、などを解説しました。最後に、ポアンカレ12面体を含む、宇宙の形のその他の候補を紹介し、それらの3Dビデオを上映しました。 生徒にとっては、宇宙に形があること自体が驚きであったようです。質問も、素朴なものから非常にレベルの高いものまで出され、それぞれの興味に応じて楽しめたかと思います。

浅岡講義
浅岡講義

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