集合写真

銀河学校2011

日時2011/8/9 - 12
場所東京大学木曽観測所
対象生徒27名
担当者三戸、青木、村仲、舘洞、金澤、志村

内容:

第14回目の銀河学校が木曽観測所にて開催されました。毎年3月に行われる銀河学校ですが、今年は昨年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震の影響で延期となり、8月の開催となりました。今年も意欲の高い学生が全国各地から集まり、3泊4日にわたって、観測、データ解析・議論、発表を行いました。以下に、銀河学校2011の各班の様子を報告いたします。

銀河学校の開校式
銀河学校の開校式

A班:かみのけ座銀河団~巨大銀河集団にひそむダークマター~

A班はかみのけ座銀河団の中心から5つの視野の画像をもとにかみのけ座銀河団に属する銀河にはどのような形状の銀河がどのぐらい存在するのかを調べました。また、かみのけ座銀河団の質量ももとめました。その後、かみのけ座銀河団から見つかった高温ガスの質量や、かみのけ座銀河団が今の状態にあるために必要な質量といわれる力学質量を文献のデータから得て、それらを求めたかみのけ座銀河団の質量と比較し、光や電波では観測することができないダークマターについて考察をしました。撮影した天体画像は、観測中にうす雲が通過した影響で、同じ星でも観測時間によって明るさが大きく変わってしまう現象がみられ、研究材料がよいものとは言い難い状態でした。しかし、これに対しても知恵を出して補正する方法を考え、実際に適用するなど、より精度の高い結果が出るよう努力している生徒の姿が見られました。また、個人の得意な分野を生かした分担作業によって、効率よく研究を行っていました。

観測の体験
観測の体験

最初のうちは少人数で作業をして班全体での考えがまとまらなかったり、なかなか意見がでない雰囲気がありました。しかし、議論が進むにつれ互いの結果について質問したり、最終発表にむけて意見を出し合い議論を重ねていく生徒の姿がとても印象的でした。

B班:散開星団の観測で探る天の川銀河系の回転

B班は、「ケプラーの法則」が、天の川銀河系の回転においても成り立つのか?という問いに答えるべく研究を行いました。観測天体は、太陽系における惑星のように比較的公転(回転)面がそろっていると考えられる散開星団を選びました。しかし初日は天候に恵まれなかったために、事前の観測で撮影された画像データやその記録をもとに、パソコン上で測光をおこないました。多くの生徒がはじめておこなう「測光」という作業に苦労しながらも、2日目のお昼頃には、3つの散開星団の色―等級図を得ることができました。しかしその色―等級図を、すでに地球(太陽)からの距離が測定されている星団の色―等級図と比較して、観測天体の距離を推定することは決してやさしい作業ではなく、実際に専門的なデータを読み、分析をすることの難しさをここで実感した生徒も多かったようです。

3日目はまず、銀経・銀緯の書かれた銀河系の地図に、3つの散開星団の位置を書き込むことから作業が開始されました。銀河系中心からの距離、そして観測から得られていたそれぞれの視線速度・横断速度によって、各星団の銀河中心からの距離と回転速度を求めました。その結果は、銀河系においてケプラーの法則が成立するとは必ずしもいえないものでしたが、なぜそのようになったのかについての多角的な考察が発表に盛り込まれました。

魅力的なテーマながらも、かなり密度のある内容であり、毎日の作業時間は深夜にまで及びました。しかし発表会や食事会での表情はとても清々しいものであり、その後の観測会や宿舎に戻ってからも続いた班をこえた交流は、今回の研究と共に、忘れられない思い出になったことでしょう。

解析
解析

C班:変光星で探る銀河系の構造

C班は他班より少々蒸し暑い環境にもめげず、8人の高校生が銀河系内で球状星団がどこに位置するのかを、球状星団に属する短周期型の変光星に着目して研究に取り組みました。

発表会の様子
発表会の様子

生徒は一日目の見学・講義を終えた後、夜の観測は残念ながら天候に恵まれなかったため、あらかじめ撮影しておいた画像をもとに解析をスタートさせました。初めて使うソフトに苦労しながらも、生徒は協力して画像の処理・測光を行っていきました。初日はまだ初対面のぎこちなさもあり、おそるおそる話しかけていましたが、観測やデータ処理を進めていくうちに分からないことを教え合うなど打ち解けていった姿が見られました。二日目は画像の解析を進めるとともに、天候に恵まれたため時間を空けて二回観測に行きました。初日のときは教えてもらいながらの観測でしたが、今回は手順にも慣れてスムーズに観測することができました。三日目は時間がない中でグループに分かれて仕事を分担し、前日の夜に撮影した画像の解析を行い、最終発表の準備を行いました。短い時間の中での研究でしたが、発表では質問にもしっかりとした話し方で対応している生徒の姿が印象的でした。

大学レベルの実習ということもあり、生徒たちにとっては難しい内容だったと思います。また、変光星を扱ったため解析する画像の枚数も多く、分かりやすく分類しメモを取っておくことの大切さも学んだのではないでしょうか。学年も出身地も違う高校生たちが集り、協力して解析を行い議論する場はなかなかありません。中には天文とは全く違う道に進む人もいるはずですが、今回の経験は生徒たちにとってきっとプラスになることと思います。

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