日時 | 2011/8/22 - 23 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県木曽青峰高校理数科2年生生徒29名、教員3名 |
担当者 | 山村、枠本 |
東京大学木曽観測所で長野県木曽青峰高校2年生を対象に星の教室を開催しました。実習では、天体写真を用いて銀河の視角を測定することで地球から銀河までの距離を概算しました。その後、データベースにあるそれぞれの銀河の後退速度と合わせることでハッブルの法則を示し、宇宙の年齢や宇宙膨張について考察しました。
開講式の後、天文学の歴史と実習の概要などについて講師の酒向重行さん(東京大学助教)による講義が行われました。天文に興味を示した生徒が多く、真剣に講義を聴いていました。
その後、105cmシュミット望遠鏡の見学を行いました。自分たちの住む木曽にこんなに大きな望遠鏡があるのかと感激する生徒が多く、望遠鏡に見入ったり、熱心な表情で説明を聞いていたりする生徒の姿が見受けられました。
望遠鏡見学後に実習を行いました。実習1では視角や物体の大きさなどをを求める方法について学びました。具体的にはデジタルカメラで班のメンバーや先生、TAの人の写真を撮り、その写真を利用して視角を求め、撮影者からメンバーまでの距離を計算しました。講義だけでは理解できないことが多そうでしたが、実験が始まると呑み込みの早い生徒が多く、あっという間に視角や距離を求めました。
直後に行った実習2では、実習1で学んだ視角と物体の大きさから距離を求める方法を利用して地球から銀河までの距離を求めました。銀河の画像を興味深く観察している様子が見られました。また、パソコンを操作する人、画像の長さを測る人、銀河までの距離を計算する人など、役割を分担している様子が見られました。余裕があったところは実習3で行う後退速度を調べている班もありました。
夕食後の実習3では、実習2で求めた地球から銀河までの距離とデータベースにある銀河の後退速度を利用してグラフを描いてハッブルの法則を示し、宇宙の年齢や宇宙膨張について考察しました。ほとんどヒント無しで実習に取り組んでもらったので議論が膠着していましたが、講師やTAが少しずつヒントを与えると議論が深く進みました。どの班も実習終了後にも議論し、中には午前4時半まで議論をしていた人もいました。
2日目は朝から考察し、発表に向けて準備が進められました。班のメンバー内や班の間で議論が活発に交わされ、発表開始時刻を15分遅くしなければならないほどでした。
発表は他の班の発表内容を真剣に聴いている姿が多数見受けられました。また、意見を交換する場面が見られるなど、活発な議論が繰り広げられました。各班の発表とも、宇宙の年齢を求めるだけで終わらず、宇宙空間の広がり方や中心の位置の特定方法、また年代によってグラフの傾きが違うことなど、予定していた時間を30分超過するほど内容の濃いものでした。
発表終了後、酒向さんが最後のまとめの講義を行いました。この講義では、近年の天文学の発達によって周知されている考えや、ハッブルの時代から宇宙観がどのように変わってきたのかなどを話しました。2日間にかかっての議論と発表体験で、生徒の皆さんには更に天文学に興味を持っていただけたようで、スタッフやTAに質問をするなど、熱心な様子がうかがえました。
今回の星の教室での体験は、普段の高校生活で味わえるような体験ではないと思います。発表するまでの過程で、想像をふくらませ、未知のことを解き明かそうとする生徒の皆さんの有り余る探求心に感心しました。この2日間で仲間と考察し、議論し、発表したことなどの体験は、大きな収穫であり、今後の生徒の皆さんの糧となることでしょう。