日時 | 2011/8/27 - 28 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県屋代高校二年生生徒41名、および同学校教員2名 |
担当者 | 三戸、黄、松岡 |
東京大学木曽観測所で長野県屋代高校二年生を対象に星の教室を開催しました。 実習では、天体写真を用いて銀河の視角を測定することで地球から銀河までの距離を概算し、データベースにあるそれぞれの銀河の後退速度と合わせることで距離‐後退速度図を描き、宇宙の年齢について考察しました。
開講式の後、天文学の歴史と実習の概要についての講義を行いました。積極的に質問をする生徒が多く、良い雰囲気でスタートを切ることができました。 その後、105cmシュミット望遠鏡の見学を行いました。生徒は望遠鏡を見てその大きさに驚いたり、ドームの回転を見てびっくりしたりしていました。スタッフの説明も熱心に聴き、気になることをどんどん質問しているのが印象的でした。これからの実習に対するモチベーションが上がって良かったと思います。
実習1では視角、物体の大きさ、距離を関連付け、物体の大きさと視角から距離を求める方法について学びました。具体的にはデジタルカメラで班のメンバーを写した写真を利用して視角を求め、撮影者からメンバーまでの距離を計算しました。実験開始時には視角と写真上での長さの関係性を理解できていない班もありましたが、実験を通じて正しい理解を得ることができたと思います。
夕食後に行った実習2では、実習1で学んだ視角と物体の大きさから距離を求める方法を利用して地球から銀河までの距離を計算しました。順調に作業が進んでいましたし、班のメンバーで協力して効率よく作業を行えていたので感心しました。また、銀河の大きさを決める基準について考えている生徒が多くいました。自分で実験データを整理することは高校生には滅多に無い機会だったと思いますし、勉強と研究を結び付ける一つの良い経験になったのではないかと思います。
実習3では、実習2で求めた地球から銀河までの距離とデータベースにあるそれぞれの銀河の後退速度を利用して距離‐後退速度図を描き、宇宙の年齢について考察しました。ほとんどヒントの無い状態で一つの問いについて長時間考えるのは初めてのことで大変だったようですが、どの班も制限時間ぎりぎりまで真剣に議論を続けることができました。中には実習後に深夜まで議論を続けている生徒も見られ、翌日には前日に比べ驚くほど議論が進行していました。
二日目は昨日の宇宙の年齢に関する考察をさらに深めた後、発表に向けて準備を進めました。班のメンバー内での議論は昨日に引き続き活発に行われましたが、時間に対する意識も高く順調に準備が進みほとんどの班は定時前に発表資料を準備することができました。発表時間中も、他の班の発表内容を真剣に聞いて自発的に質問をする生徒が多く感心するばかりでした。
班によりそれぞれユニークな案が取り入れられた発表となっており非常に面白かったです。具体的に挙げると、宇宙は一点から始まり等速直線運動をしているため宇宙の中心には星の無く、外側にかたまった構造をしているだとか、宇宙はそれぞれの星との位置関係を保ちながら相似的に膨張しているだとか様々な意見がありました。 他にも距離‐後退速度図に直線を引く方法や直線からのずれの原因についてなど様々な考察が行われていました。
発表終了後、最後の講義を行いました。そこでは、宇宙の年齢の求め方に関する解説と、その発展として宇宙についてのアインシュタインの考えを紹介しました。二日間に渡る議論と発表体験で、生徒のみなさんはさらに天文学に関する興味を深めたようでした。
今回の星の教室での体験は、普段の高校生活ではなかなか味わえない独特な体験になったようです。「一つの困難な問題を長時間必死になって解く過程で、一人では挫折してしまっていただろうけど仲間と一緒だから乗り越えられた。」という意見が多かったからです。コミュニケーションの大切さ、楽しさを味わってもらえたようで非常に嬉しく思います。これから大学に進学し、社会で活躍するにあたって役立てていただければ幸いです。