長野県飯山北高校星の教室

長野県飯山北高校星の教室

日時2011/9/15 - 16
場所東京大学木曽観測所
対象長野県飯山北高校二年生生徒41名、および同学校教員2名
担当者三戸、深瀬、志村

概要:

東京大学木曽観測所で長野県飯山北高校二年生を対象に星の教室を開催しました。実習では、天体写真を用いて測定した銀河の視角から地球-銀河間の距離を概算し、その後データベースにあるそれぞれの銀河の後退速度と求めた距離の関係を図に描き、宇宙の年齢についての考察を行いました。

[1日目]

開講式の後、天文学の歴史と実習の概要についての講義を行いました。 その後、105cmシュミット望遠鏡の見学で生徒たちはその大きさに圧倒されていた様子で、スタッフの説明に熱心に耳を傾けていました。

望遠鏡を見学
望遠鏡を見学

望遠鏡の見学後の実習1では、視角を利用して距離を求める方法を学びました。デジタルカメラで班のメンバーを撮影し、その写真から視角を求め撮影者からメンバーまでの距離を計算しました。見かけの大きさを角度を使って表すというのは普段あまり触れない概念であったためイメージが掴めず苦労しているようでしたが、実習を進めるにつれて徐々に理解していったようでした。

視角を学ぶ
視角を学ぶ
実際に視角を求める
実際に視角を求める

夕食をはさんだ実習2では、実習1で学んだ視角と実際の大きさの関係を銀河に応用させて、地球から銀河までの距離を求めました。全体を通して計算がメインであったため、実習1との差に戸惑いを覚えた生徒もいたようでした。また各班が扱った銀河の画像も多く、計算した数値を整理するのも大変だったようです。

宇宙年齢の求め方は?
宇宙年齢の求め方は?

実習3は、実習2で求めた地球から銀河までの距離とデータベースにあるそれぞれの銀河の後退速度を図として描き表し、宇宙の年齢についての考察を行いました。ほとんどヒントも無く初めは図の中から関係を読み取るのも難しいようでしたが、講師やTAが少しずつヒントを投げかけているうちに議論が進んでいきました。中には実習時間を過ぎても話している生徒の様子が見受けられました。

ヒントに聴き入る
ヒントに聴き入る

[2日目]

2日目は発表会に向けての簡単な説明の後、昨日の議論を深めつつ、各班が発表準備を進めました。議論に納得がいかない生徒もおり、発表会の始まる直前まで資料を準備しながら活発に意見交換している様子が見られました。考察に用いているのが地球を基準とした距離と後退速度であることが大きな疑問点で、地球と宇宙の中心についての考察に特に苦慮していたようです。

また、測定誤差について詳しく考えていた班や分かりやすく発表資料をまとめている班、これまで学習してきた内容と結びつけて議論している班など各班さまざまな工夫が見られました。発表会では計らずとも各班が抱いていた疑問点に関する考察を少しずつ深めていき、全体で1つの結論に辿り着くような形となりました。質疑応答でも活発な意見交換が見られ、関心の高さがうかがえました。

発表。鋭い質問が出ます
発表。鋭い質問が出ます

発表終了後は、最後の講義を行いました。そこでは、宇宙の年齢の求め方に関するまとめや、今回の実習に対する発展的な投げかけがアインシュタインの考えを紹介するとともに行われました。2日間の講義と実習、発表体験を通して、天文学に関する興味をさらに深めたのではないかと思います。

[まとめ]

この星の教室での体験は、普段の高校生活ではなかなか味わえないものです。これだけ深く議論したのは初めてだという感想を抱いた生徒もいたように、天文学の分野に限らず1つの問題に対してここまで考え抜き結論に至ったこの経験は、今後にとって決して無駄にはならないはずです。わずか2日足らずの実習でしたが、生徒のみなさんには忘れられないものになったのではないでしょうか。

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