小田原高校出前授業

小田原高校出前授業

日時2013/6/28
場所神奈川県立小田原高校
対象生徒34名
担当者穂坂、高橋、金澤、卯田
神奈川県立小田原高校において、「理工系研究の魅力」~東京大学、東北大学、JAXAをはじめとする研究機関の今~というタイトルで進路講演会を行いました。 定期試験前の放課後ということでしたが、意欲ある生徒達が集まってくれました。 数学、天文学、宇宙工学についてそれぞれ約15分の講演、その後約20分のパネルディスカッションがありました。 最先端研究の魅力のみならず、研究をするために必要な高校時代の勉強などにも触れ、生徒達の進路選択にヒントを与えることができたと思います。

講演1

穂坂秀昭(東京大学大学院数理科学研究科博士課程)

大学の数学の魅力と、高校の数学との違いについて講義を行いました。

大学の数学は高校までの数学の高度な一般化・抽象化であるということを微積分とベクトルを具体例に説明しました。 また、図を描く行為を例に取り、数学では「よく理解すること」が重要であると説明しました。

生徒達は大学の数学の難しさ、偉大さに驚くと同時に、穂坂が数学にとても魅せられていると感じたようでした。

穂坂講演
穂坂講演

講演2

高橋安大(東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程)

天文学とはどのような研究をする学問かを簡単に紹介しました。また良く誤解されがちな天文学と宇宙工学の違いについて、ロケットの写真と計算機の写真を使って説明しました。

天文学というと何となくロケットを想像してしまうが、ロケットの打ち上げは宇宙工学の分野であり、 天文学では計算シミュレーションなどを行うということに生徒達は深くうなずいていました。

次に、すばる望遠鏡やALMA望遠鏡の写真を用いて、国立天文台の概要について説明しました。 国立天文台は天文学の研究のみならず、春分の日などを定めているということは、生徒達にとって驚きだったと思います。

最先端のトピックとして、太陽系外惑星の発見事例と、宇宙生物学を挙げました。 現在はまだ、「宇宙人を見つける」という段階ではなく、「光合成が行われる可能性がある惑星を探す」段階である、という説明に生徒たちは少し残念そうでした。

「天文学を学ぶのに必要なこと」に「天文学に対する批判に耐える精神力」を挙げたときには、教室中から笑いが起こりました。天文学を専攻できる大学は限られている、という話など、メモをとる生徒が非常に多かったです。

高橋講演
高橋講演

講演3

金澤慧(総合研究大学院大学物理科学研究科宇宙科学専攻博士課程)

自己紹介で、高校時代の進路選択でなぜ天文学ではなく宇宙工学を選んだかの説明をしました。

研究紹介では学部生時代の流体力学や並列計算アーキテクチャの設計、大学院生時代の小型月探査機の誘導航法制御システムの説明をしました。 宇宙科学研究所の概要について説明した後、宇宙科学の今後の課題として、衛星の標準化やロケットの自律点検システムなどによるコスト削減や高頻度打ち上げをあげました。

先の二人が理学系であったため、同じ理科系分野でも異なる文化を持つ工学系の話から普段気づかない両分野の共通点や相違点を知り、生徒のみならず、先生方も深く聞き入っていました。

金澤講演
金澤講演

パネルディスカッション

「最近気になったニュース」という題では、金澤はアメリカの企業「SpaceX」の国際宇宙ステーションとのミッションを挙げました。 高橋は連星の周りを公転する、映画「スターウォーズ」における「タトゥイーン」のような惑星を実際に発見したということを、 穂坂はCPUではなく、3Dグラフィックスなどに用いられるGPUを使った科学技術計算について触れました。

「大学生、修士課程、博士課程の違い」については、学部では勉強、修士に進むと先生の力を借りながら研究の基礎を学び、 博士では、一人前の研究者の卵として扱われる、という見解で3人とも一致していました。 また、大学から修士課程に進む際には、自分の望む研究ができる環境、先生のところに行くべきだという見解を述べました。

「企業や海外、他の研究分野との連携」という題では、数学、天文学は海外との交流が盛んに行われていて、宇宙工学は他の研究分野との連携が必要な学問である、という違いがありました。

高校時代に銀河学校での体験から進路を決めた金澤の体験話から、生徒達は進路選択の際には、多くの情報を集めることの重要性を知ったようでした。

パネルディスカッション
パネルディスカッション

パネルディスカッションの全体会が終わった後にも、残って講師たちに質問をする生徒もいて、非常に興味をもっていただけたようでした。 今回の講演が、生徒達が「自分は何を本当に勉強したいのか」を真剣に考えるきっかけとなり、進路選択に役立ててもらえればと思います。

記念撮影
記念撮影