日時 | 2012/10/19 |
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場所 | 島根県立松江北高校 |
対象 | 理数科、普通科理系2年生 |
担当者 | 鳥羽、高橋、穂坂、市川、浅岡、村川、田中、飯田 |
材料力学とは“物を壊す”ことを科学することである。ということがテーマで授業を行いました。大学で学ぶ工学の内、機械工学で必要となる材料力学の入門的な内容となりました。社会の中のどのような場所に材料力学が使われているのかを写真や動画を取り入れながら解説が進み、材料力学の失敗例として映された想像を超える映像に聞いている生徒が息を飲む場面もありました。図だけでなく、茹でていないパスタを使用して生徒自身に物理的な仕組みを体験してもらうことで材料力学の定性的な理解の手助けとしました。授業後半では二人組の班に分かれてもらい、茹でていないパスタを用いて橋作りをしました。どの班も真剣に取り組み、どうすれば丈夫な橋が出来るのか熱心な言葉が交わされました。
この実習で授業を通して学んだ材料力学の内容の定着と、材料力学への興味を促すということが出来ました。実習後のまとめ講義になると自分が作った橋が強かった理由、弱かった理由の解説がありその部分で真剣に講義を聞いている姿が印象的でした。
携帯電話は私たちの生活の中で最も身近なアイテムの1つです。しかしその携帯電話が通信できる仕組みをご存知の方はあまりいないのではないでしょうか?今回の浅岡による出前授業では、その仕組みについての説明が行われました。
まず最初に行ったのは「光線電話」の工作です。普通の携帯電話は電波を使って通信を行いますが、光線電話は電波の代わりに市販のLEDの光を使います。光線電話に使われる抵抗、コンデンサやオペアンプといった機器の役割と回路図について簡単に説明を行った後、実際に生徒たちに光線電話の製作をしてもらいました。
本物の回路図を読むのはとても難しく、また半田付けの作業にはコツが必要です。そこで今回の作業にはブレッドボードという道具を利用しました。ブレッドボードは予め配線された基盤に素子を差し込むだけで配線が完了してしまう、とても便利な道具です。これに予めいくつかの素子を配置しておき、残りを完成させてもらうという形で、生徒に回路の組み立てを行ってもらいました。回路の組み立ての途中で手こずった班もありましたが、最終的には全ての生徒が動く光線電話を完成させることができました。実際に光を用いて通話が出来たことに、生徒たちは大いに感動していました。
さて、今回の出前授業で一番伝えたかったメッセージの一つは「電波は資源である」という事実です。実際に電波の利用状況をグラフにしてみると、ほとんど全ての帯域の電波が何らかの用途に利用されています。授業ではその様子を説明した後、携帯電話がどのように電波を利用してきたかの歴史を追いかけました。そして今の携帯電話が電波を効率的に使うためどのような工夫をしているかについて、丁寧に説明がなされました。
そして最後に、今流行っている「プラチナバンド」の説明がありました。プラチナバンドとは、今までの携帯電話で使われていたのとは違う700~900MHz帯の周波数のこと。プラチナバンドが導入されたのも、今までよりも効率的に電波を使うため、そしてこの周波数帯の電波が携帯電話の通話に適していることです。このあたりの事情を先に説明した携帯電話の原理と絡め、浅岡はプラチナバンドの重要性を説きました。日頃聞き慣れたキーワードについて技術的に深い解説を聞き、受講した生徒たちは感心していました。
この授業ではテーマを宇宙の話題ではよく登場する宇宙年齢に設定し、ハッブルの法則を用いて実際のデータから宇宙年齢を求めました。まず初めに自己紹介のあと、宇宙の構成要素について説明をしました。地球、太陽系、銀河系と広げてゆき、宇宙の広さをまず知ってもらいました。
銀河を構成する恒星数が数千億であること、そしてその銀河の数がまた一千億個あることを紹介すると途方のなさに生徒も驚いていました。
次に本題の宇宙年齢を求めるのに必要な知識について説明をしました。
距離の単位、絶対等級と見かけの等級、セファイド変光星、ハッブルの法則は通常の学校の授業で学ぶことはあまりなく、宇宙に興味のある生徒であっても具体的な天文学の専門知識を知っている人は少ないようでした。
それゆえ熱心にメモを取りながら話を聞いている生徒が多かったようです。
そして、その知識を使ってセファイド変光星の周期から絶対等級を求め、距離に変換する実験を行いました。
対数や指数といった覚えたての数学の知識を利用するのに戸惑っている生徒もいましたが、全員がきちんと求められました。
続いていま算出した距離をまとめてハッブル定数を出し、実際に宇宙年齢を求めました。
式に代入し計算する作業でしたが、生徒も一生懸命に取り組みました。
特に単位の換算は混乱してたようで、丁寧に計算をしていました。
天文学というと星を見るイメージが強い生徒が多かったようですが、実際の天文学がこのような計算に基づいていると分かると意外そうな生徒も多かったです。
この講義の目的は、誰もが聞いたことはあるブラックホールについて最先端の研究成果とともに科学的に理解することです。
鳥羽は講義のスタート直後から生徒の心をつかみ、生徒は話に聞き入っている様子でした。ブラックホールという概念が生まれた背景から、現在のブラックホールの姿まで、鳥羽自身の研究の話を織り交ぜながら話を進めていきました。
「地球をブラックホールにするためには、どれくらい小さくすればいいか」という問題では、実際に生徒に計算してもらいました。皆さん計算を理解しようと友達同士相談しながら楽しそうに解いていました。今回の講義を通じて、ブラックホールについて興味をもち、天文学という学問を身近に感じてもらえたら幸いです。