日時 | 2012/3/27 - 30 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 生徒27名 |
担当者 | 三戸、村仲、村川、浅岡、志村、深瀬、青木 |
第15回目の銀河学校が木曽観測所にて開催されました。今年も意欲の高い、好奇心 に満ち溢れた高校生が全国各地から集まり、3泊4日にわたって、105cmシュミット望遠鏡を使った観測、 データ解析・議論、発表を行いました。以下に、銀河学校2012 の各班の様子を報告いたします。
同時に誕生した新しい星の集まりである散開星団のほとんどが天の川の中に存在す ることから、3つの散開星団(今回はぎょしゃ座のM36.37.38)とその3つの星団が存 在する領域に注目して研究を行いました。 それぞれの星団の中に存在すると思われる星を約200個測光し、色と明るさの分布図 (H-R図)を作成しました。生徒たちが自分たちで図をもとに、ここで青い星ほど明 るいという性質を見出し、また寿命が短いという特徴からそのそれぞれの星団のもっ とも明るい星に注目することによって3つの星団がどのような順番で誕生したのかを 推測しました。結果が分かったときの生徒たちの表情が印象的でした。また、星団の 距離のグラフを利用することによって自分たちで求め、そこから具体的に星団の年齢 も推定しました。
また、星団の中の星とそうでない星を分類する方法も自分たちで考え実行し、そこに 相関がないことも見出しました。
今回は明確な結論が出せる議論が行われたことが大きな特徴の一つでした。
B班は星形成領域の水素から放出される「Hα放射」を観測し、銀河の進化の様子を 調べました。
生徒たちは一日目の見学や講義を終えた後、早めの観測に備えて夕食を食べながら 自己紹介をしました。それまでは初対面でどこかぎこちなさの残る様子でしたが、こ れをきっかけに打ち解けた雰囲気で班での解析や議論を行うことができました。研究 を進めるための画像処理はこちらも驚くほどすぐに覚えて、翌日には議論に移ること ができました。二日目に処理を終えた画像を印刷して壁に貼り付けました。何枚もの 銀河の写真が並ぶ様子は圧巻で、生徒たちも前日からの成果を改めて感じているよう でした。中間発表での受け答えもしっかりとしていて、自分たちの研究に自信を持っ ている様子が伝わってきました。その後一部の処理をやり直して、夜からは本格的な 議論に移りました。積極的に発言する生徒も多く、解析の結果から分かることを遅く まで熱心に話し合う姿が見られました。三日目に入っても議論は更に続き、銀河の星 生成の変遷についてまで考察を深めていきました。午後の発表会では伝えたい内容が 多すぎてまとめるのに苦労していたようでしたが、三日間の研究成果を整理して発表 できていたと思います。
今回の銀河学校ではどの生徒も学年差が感じられないくらい理解が深かったように 思います。発表が終わってなお議論を続ける姿も見られ、生徒の持つ熱意がよく感じ られました。この四日間の貴重な経験を通して天文学への興味が更に高まったのでは ないかと思います。
今回C班は、銀河団までの距離の測定方法と、そのデータから宇宙膨張の加速の様 子を探ることが課題でした。
最初に、おとめ座銀河団、かみのけ座銀河団、ヘルクレス座銀河団の3つの異なる 銀河団の画像を解析してそれぞれの銀河団に属する銀河の大きさや明るさを求め、そ の情報から銀河団の距離を求めました。銀河団に属する銀河の大きさと明るさを求め る作業は、1つの銀河団に対して3人のグループに別れて作業を行いました。明るさ から距離を求める方法と大きさから求める方法、それぞれについて、より正確なデー タを得るにはどのような計算をするべきかといった活発な意見交換が生徒間で行われ ました。
導き出した3つの銀河団の距離とそれぞれの赤方偏移の関係をグラフにすること で、天体が光を発した時の宇宙の大きさと時刻の関係がわかるため、宇宙の膨張の様 子を見ることが出来ます。生徒達は自ら導き出した距離と文献値の赤方偏移をグラフ にしました。銀河団から求めた宇宙の大きさの変化からは、宇宙膨張の様子を見るこ とは出来たものの、加速の様子を見ることは難しいようでした。導き出した結果を分 析し考察することの難しさをここで実感した生徒も多かったようです。宇宙膨張とい う壮大なテーマを短い期間で扱いましたが、その分密度の濃い時間を生徒は過ごせた ようです。特に発表の際、質問にしっかりとした受け答えをする生徒の姿が印象的で した。望遠鏡を使って自分自身でとったデータの解析を行い、難しい内容を議論した 今回の経験は生徒達にとって有意義な経験になったと思います。