日時 | 2012/9/29 - 30 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県飯山北高校理数科二年生生徒35名、および同学校教員2名 |
担当者 | 枠本、尾上 |
東京大学木曽観測所で長野県飯山北高校二年生を対象に星の教室を開催しました。実習では、「宇宙の年齢を求める」というテーマに沿って、まず「視角」というキーワードについて学んだ後、銀河のデータベースを用いて選んだ銀河までの距離を求め、後退速度と距離のグラフから宇宙の年齢はいくつか、さらには宇宙はどのように生まれ進化してきたのかについて考察しました。
開校式を行った後、実習の導入となる講義を行い、宇宙が生まれたり、成長するとはどういうことなのか、という問題提起をしました。その後の望遠鏡見学ではドームやシュミット望遠鏡の迫力に生徒達はみな驚き、興味を持っていたようでした。
実習1では「視角」という普段聞きなれない概念を紹介し、人間が目で見るものの大きさは視角の大きさであり、視角を使うと直接測らずに対象までの距離を求められることを説明しました。その後、生徒達にはまず長さの基準となるポールの写真を撮ってもらい、そのポールの写真上での長さから写真での1cmが視角で何度に対応しているかを求めさせました。次に、その基準の大きさを用いて生徒たち自身が好きな位置に立って写真に写り、先ほど求めた基準を使って写真に写った自分がカメラからどのくらい離れているのかを求めさせ、その値が実際に巻尺で測ったカメラからの距離と一致するかを確認させました。この実習は各班とも的確に計測を行い、視角を使った距離の計算ができていました。
続く実習2では実習1を応用させ、データベースから選んだ銀河の画像の視角を求め、その値と代表的な銀河の大きさを用いてその銀河までの距離を推測する、ということを行いました。距離を求める計算では計算ミスをして途中でやりなおすなど苦戦していた班もいくつかありましたが、全体的には銀河の画像を選んで印刷する人、印刷された画像での銀河の大きさを測る人、そして距離の計算をする人、というように班内で役割分担をして、非常にテンポ良く作業を進めていました。
実習3では、求まった銀河までの距離とその銀河が地球から遠ざかる速度のデータの関係をグラフにし、そのグラフから宇宙の年齢を求めよう、ということを行いました。生徒たちは得られたグラフからどうやって宇宙の年齢が求まるのかに頭を抱え、各班で活発な議論が見られました。議論では「銀河が地球から遠ざかるのはどうして?」、「宇宙の始まりって何?」といった疑問が次々に飛び出し、それぞれ個性的な宇宙論や進化モデルを思いついていたので、聞いている我々としては非常に興味深い時間でした。班によっては深夜まで作業が続きましたが、1日目の段階で全班がそれぞれの考え方に基づいた宇宙の年齢を求めるところまでたどり着いていました。
2日目はまず1日目の議論の確認、修正を行って、いよいよ発表準備に入りました。準備時間の少ない中、生徒たちは焦りながらも発表用の資料作りを素早く行い、全班予定時刻までに発表準備を整えることができました。本番は各班10分の持ち時間で自分達が考えた宇宙の年齢の導出方法、そして宇宙がどのように生まれ進化したと考えたのかについて発表をしました。各班が求めた年齢は120-180億年となり、現在考えられている値とかなり近い値を求めることができていました。中には、距離-後退速度図で明らかに他と傾向が違ってしまった銀河について、なぜその銀河が他と違った位置にプロットされたのかを考察していた班もありました。
全班の発表の後は、現在天文学で考えられている宇宙の始まりや進化についての解説があり、2日間真剣に作業に取り組んだこともあって生徒たちは真面目な顔で話を聞いていました。
正味1日の短い実習でしたが、それでも生徒達からは「こんなに宇宙のことについて考えたのは初めてで、とても面白かった」、「最初は宇宙の年齢なんてわかるわけがないと思っていたが、実際計算することができたので感動した」、などといった好意的な声を聞くことができました。今回の生徒がみな最初から天文学に興味を持っているわけではないと思いますが、2日間の実習を通して全ての生徒が実習に真面目に取り組んでくれたのは非常に良かったです。きっと、生徒たちにとって貴重な経験になったと思います。