日時 | 2013/3/26 - 29 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 生徒33名 |
担当者 | 三戸、鳥羽、梅畑、泉田、市川、浅岡、沖中、田中、卯田、飯田 |
第16回目の銀河学校が東京大学木曽観測所で行われました。 全国から集まった、男子10名、女子23名の計33名の高校生が3泊4日にわたって、天文学を研究しました。 以下に各班の活動のレポートを行います。
現在「系外惑星の研究」は、最も発展した天文学の分野だと言えます。 系外惑星を観測する方法の一つとして、直接撮像法と呼ばれる手法があります。 今回A班では、この直接撮像法を用いて、「木星の衛星の探査」を行いました。 観測は2回に分け、その間は約2時間あけて行いました。 観測した時間の違うデータ同士を引き算する(差分法)ことで、 その2時間の間に位置が変わった天体以外は打ち消されて画像上からなくなります。 その結果、引き算によって打ち消されずに残ったものが移動天体とわかります。 移動天体を見つけたとき、拍手が巻き起こり、生徒みんなが喜んでいました。 次はその移動天体が小惑星か木星の衛星なのかを生徒みんなで議論していました。 その後、議論によって木星の衛星だとわかった天体を詳しく調べました。 木星の衛星の情報で、観測データから求めることができる項目を生徒自身で考え、求めました。 たくさんの意見が飛び交い、議論した末、軌道半径、公転周期、直径、等級、質量(月と同密度と仮定)が算出できました。
生徒のみなさんは短い期間でしたが、研究を観測するところから研究結果を発表するところまで通して経験しました。 研究発表後には、実際の研究で行われているものと同じ方法で自分たちも研究できるということがわかり、 自信をつけていたように感じました。 今回の経験を通して、天文学がもっと好きになったのではないかと思います。
自ら光を放つ恒星と言われると、太陽のような孤立した1つの恒星からなる単独星がまず最初に思い浮かぶ人も多いかもしれませんが、 夜空に輝く星々の半分くらいは2つ以上の恒星からなる「連星」と呼ばれる天体であると考えられています。 連星をつくる天体はお互いの共通重心の周りを公転しており、その公転軌道を地球から観察するとき、1つの星が別の星を隠すことで明るさが変化してみえる「食」という現象が起こります。
私たちは「ポーラー」と呼ばれる近接連星が起こす「食」を観測し、その様子から2つの星の大きさや明るさを求めました。銀河学校では木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡でポーラーを観測しました。 最初は緊張した面持ちで所員さんたちの指示に従っていた高校生でしたが、望遠鏡が動き出すと、生き生きとしたとてもいい笑顔をみせてくれました。 残念ながら食の予報時刻にポーラー方向の空が曇ってしまい、食の観測はできず、予備データを使う事になりましたが、実際に天文学者の方が仕事で使う大きな望遠鏡を自分たちの手で動かしたという経験は天文好きの高校生たちにとって貴重なものになったと思います。
その後、食の観測データを画像解析ソフト「Makalii」で測光して相対光度を出し、その結果を光度曲線のグラフにして近接連星の光度変化を求めました。そのグラフを元に減光にかかる時間と食の継続時間、そして主星と伴星の色の違いについて考えました。 さらにケプラーの第三法則から二つの恒星間の距離を求め、そこからそれぞれの天体の半径も導き出しました。
今回は年齢がバラバラの11人で研究を行ったので、計算の時間など学年が下の生徒は難しかったかもしれませんし、計算が不得意な人もいたと思いますが、分からないところはお互いに教え合って乗り切ることができました。 4日間を通して、高校生の皆さんは楽しみながらも一生懸命取り組んでくれました。これからも天文への興味を持ち続けてくれればいいなと思います。
班は、私たち人類の住む銀河系の構造について研究しました。 自宅から一度も外に出たことのない人間が、自分の家の外見を想像することは非常に難しいことです。 私たちのテーマもそれと同様で、銀河系に住む私たちが、銀河系の姿を俯瞰して見ることはできません。 そのため、意外と銀河系の大きさや構造はわからないことが多いのです。 そこで私たちは、恒星までの距離を求めることで、銀河系にはどのように星が分布しているのかを調べることにしました。
まずは、105cmシュミット望遠鏡を使った観測です。 生徒自身がコンピュータを操作し、実際にドームの動く姿を確認すると、場は興奮に包まれました。 しかし、あいにくの悪天候により、予備のデータを使うことになりました。
次に、「Makalii」を使った測光です。 銀河系の恒星の分布を知るためには、多くのデータが必要なため、3400個という膨大な数の星の測光を行いました。 しかし、星の明るさを調べても、星の距離をすぐには求められません。 そこで、星の色を調べて、HR図(横軸に色、縦軸に明るさのグラフ)を作成することで、星の持つ本来の明るさを求めました。 これを、見かけの明るさと比較することで、星までの距離を求めました。
今回の私たちの研究は、膨大な数の測光や、標準星を探す作業など、精神的に辛い部分もあったと思います。 しかしながら、みんなで協力して、乗り切ることができました。 銀河学校を通じて知り合った仲間との絆を、これからも大切にして欲しいと思います。