日時 | 2013/6/22 - 23 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県諏訪清陵高校2年生SSHコース2年生生徒28名、および同学校教員2名 |
担当者 | 三戸、村仲、卯田 |
東京大学木曽観測所で、長野県諏訪清陵高校のSSHクラスの2年生28名を対象に星の教室を開催しました。
天体写真を用いて、銀河の視角を測定し、地球から銀河までの距離を概算しました。その後、データベースにある銀河の後退速度を用いて距離‐後退速度図を描き、宇宙の年齢について考察しました。 以下に順を追って、詳細を記します。
天文学の歴史は二回の大きなターニングポイントがあったことを説明しました。
一つ目のターニングポイントは、17世紀初頭に、ガリレオによる望遠鏡を使った天体観測が始まったことです。
二つ目は、20世紀初頭にハッブルによって銀河が移動していることがわかったことです。 この講義によって、生徒たちは自分たちの実習の目的がわかったと思います。
「どうやって動くの?」「望遠鏡の回転軸はどうして二つでいいの?」といった質問があり、見て学ぶ”見学”をしているな、と感じました。
デジタルカメラを使って、視角、物の大きさ、距離を関連付け、物体の大きさと視角から距離を求める方法について学びました。
物の大きさがわかっていれば、視覚を計測することで、物までのおよその距離を求めることができることを体験してもらいました。
三戸が先日、諏訪清陵高校で行った特別実習の補講を行いました。その実習の際に用いた式の導出過程について説明しました。原子模型やHα線、光のドップラー効果など、難易度が高いものでしたが、理解しようと一生懸命聞いている姿が印象的でした。
この補講によって銀河の速度がどのように求められるのかの理解が深まったと思います。
実習1で行ったことを踏まえて、次は天体写真を使って、銀河までの距離を求めました。
天体写真を見て、「どこからどこまでが銀河かな?」などと、友達同士で話し合ったりしていました。
実習2で求めた銀河までの距離と、データベースにある各銀河の後退速度をグラフにプロットしました。
そのグラフからどんなことがわかるのか。宇宙の年齢はこのグラフから求められるのか。 各班5人~6人の班員で相談して、議論を進めました。
・発表準備 前日、遅くまで議論をしていて、ほとんど睡眠をとっていない生徒もいたようでしたが、みんなで活発に発表の準備をしていました。
「いかに自分たちの考えをわかりやすく伝えるか」を工夫し、絵や図を入れていたのが印象的でした。
各班が15分程度、自分たちはどのように考えて、宇宙の年齢を算出したかについての発表をしました。
一日目の夜に、班の枠を超えて生徒たちの議論が行われていたので、「各班の発表が似てきてしまうのではないか」、と心配していましたが、杞憂でした。
各班のオリジナルの考えが詰まった素晴らしい発表でした。また、どのような仮定の下での議論なのか、についても各班が明確にしてくれていたので、非常にわかりやすかったです。
銀河までの距離と後退速度の関係から、ハッブルがどのように考えたのかについて解説しました。
高校生の発表を見て、「自分で考えること、議論すること、伝えること」の重要性を再認識しました
現在は便利な時代で、インターネットを使えば、多くのことを知ることができる情報化社会です。しかし、文献などに頼らず、自分で考え抜くことが、科学の基本であり、楽しいところなのだと思いました。
今後もサイエンスコミュニケーションに携わる中で、生徒に「教える」のではなく、生徒自身が考えるサポートを行う立場である、という意識が重要なのだということを肝に銘じていきたいと思いました。