長野県屋代高校星の教室

長野県屋代高校星の教室

日時2013/8/30 - 31
場所東京大学木曽観測所
対象長野県屋代高校二年生生徒36名、および同学校教員2名
担当者三戸、深瀬、植村

概要:

長野県屋代高校の高校生たちが東京大学木曽観測所にて宇宙年齢を求める実習・「星の教室」に参加しました。宇宙の年齢をどのようにして求めるか、高校生のユニークな考えで迫ります。

【一日目】

曇り空の中バスで到着した高校生たちは木曽観測所のスタッフのゆったりした雰囲気に少し驚いている様子でした。

パラパラと雨が降り始めるなか、木曽観測所のシュミット望遠鏡が収められているドーム見学に向かいます。ちょうど、駆動系と制御系の改修が終わったばかりでスッキリとしたシュミット望遠鏡の駆動部分や、望遠鏡の動く姿を所員が披露しました。望遠鏡が動くと見上げながら歓声が上がります。シュミット望遠鏡の正面から内部を熱心に覗きこんでいた高校生の姿が印象的でした。

大型望遠鏡を見上げる高校生
大型望遠鏡を見上げる高校生

宇宙年齢を求めるためには銀河の距離と後退速度が必要になります。実習1では、その銀河までの距離を求める方法として、視角を使った方法を学びました。不安定な天候にスケジュールがずれてしまいましたが、巻き尺などを使わずに屋外で撮影した写真の視角(見た目の大きさ)だけで、実際に人物までの距離を測れることを実感してもらうことができました。

写真だけで距離は求まる?
写真だけで距離は求まる?

実習2では実習1で学んだ方法で銀河までの距離を求めることに挑みます。人物までの距離ではなく銀河までの距離と大きな挑戦になりましたが、高校生たちは楽しみながら銀河の写真を眺め、距離を求めていました。ある班に実際に求めた距離と我々の住む銀河系から最も近いアンドロメダ銀河の距離を比較してもらうと、自分たちが途方もないスケールの計算をしたと実感して驚きの声があがりました。

最後に実習3です。銀河の距離と後退速度から宇宙年齢を求めたいところですが、高校生の手が止まりました。傾向がバラバラのグラフに悩み、それらしい値がでても宇宙年齢だという確証がだせないようでした。いつもの星の教室ではヒントを出しますが、今回は完全にノーヒントとなり観測所の夜は長くなります。そんな中、日中は土砂降りだった天気が所員も驚くほど回復して天の川が空にかかりました。高校生たちは天の川をみてリフレッシュしたのか議論は夜遅くまでつづきました。

天の川みえました!
天の川みえました!

【二日目】

昨晩の晴れとは打って変わって曇り空の朝となりましたが、高校生たちは意に介さずに早朝から発表準備にとりかかっていました。今回はノーヒントで実習を進めたため、各班の個性が顕著になっておりスタッフも楽しみにしながら発表時間を待ちます。

発表準備
発表準備

発表では宇宙年齢という同じテーマに対し、さまざまな考え方が提示されました。グラフの傾向の分析や、地球や銀河がどのように運動しているか、それぞれの銀河は等速運動か加速度運動かなどなど。個性の多い発表内容に全員が興味深く耳を傾け、発表後にはディスカッションが繰り広げられました。結局、1時間以上も予定をおくれて発表がおわりました。非常に興味深く、生徒からも鋭い質問がとびかい聴いていて楽しい発表時間になりました。

発表!
発表!

最後に、宇宙年齢の考え方についての講義です。高校生たちにとっては答え合わせに近く興味を持ちそうな内容でしたが、発表を乗り切ってホッとしたのか休んでいる姿がいくつかありました。おそらく全力で議論をしたからでしょう。

まとめ

今回の星の教室では、ノーヒントのため個性的な考えが多くでました。そのため多くの高校生が人に考えを伝える難しさを感じていたようです。それは発表の文字の大きさや、図の使い方などで見受けられました。一方で、予備知識として宇宙年齢と宇宙膨張を知っているために、その点については深く切り込むことが出来なかったようです。ある班では、すでに知っている宇宙年齢を目指したがために、本質的な「考え」の部分を見失っているようでした。

今回の実習ではそのような今まで意識をしてこなかったことに気づく良いきっかけになったようです。

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