第 18 回銀河学校

銀河学校2015

日時2015/3/24 - 27
場所東京大学木曽観測所
対象生徒35名 (中学3年生~高校3年生)
担当者三戸、諸隈*、鳥羽、堀内*、岩崎*、志村、石田*、山口*、植村、北村、田口、谷口
(*印はScience Station以外のスタッフです)

第18回目の銀河学校が東京大学木曽観測所にて開催されました。全国から集まった35名の高校生・中学生たちが口径105cmシュミット望遠鏡を用いた3泊4日の天文実習を行いました。

講義「天文学の入り口」
講義「天文学の入り口」

A 班: 星団から探る星の性質

A班は個性的な11人の生徒たちが星の密集した球状星団の星の性質ついての研究に取り組みました。

生徒たちは一日目の見学・講義を終えた後、トラブルに見舞われつつも夜中までかかって目的の星団の観測を終えることができました。

二日目から解析をスタートし、生徒たちは初めて使うソフトに戸惑いながらも協力して画像の処理・測光(画像上での明るさを求める作業)を行っていきました。初日からよい雰囲気の班でしたが、生徒たちに聞くと二日目の解析作業が仲の深まるきっかけとなったようです。中間発表に向けての準備では、班のメンバーが役割分担をして進めていきました。グループごとの測光の様子を詳しく確認したところ、対象領域の違いが作成した色と明るさのグラフの形にあらわれていることを発見しました。また、時間を空けて撮った画像から短時間で明るさの変わる変光星を見つけ出し、グラフ上のどこに位置するか調査しました。たくさんある星の中から明るさの変化する星を見つけ出すのは根気のいる作業ですが、集中して画面を見つめている様子でした。

三日目は球状星団の性質に迫りました。変光星の特性から球状星団までの距離を求めて、天の川銀河の銀河面との角度から、球状星団は天の川銀河の周辺に位置していることを突き止めました。短い時間の中での研究でしたが、三日間の成果をよくまとめて発表することができました。

高校生のレベルを超えた実習ということもあり、生徒たちにとっては難しい内容だったと思います。学年も出身地も違う生徒たちが集まり、協力して解析を行い議論する場はなかなかありません。今回の経験が生徒たちにとって進路を考える一助になればと思います。

(記: 志村)
A班:発表の様子
A班:発表の様子

B 班: 銀河の形は生まれか育ちか?

私たちB班は「銀河の形は生まれか?育ちか?」という銀河の形について研究をしました。太陽のような恒星が1000億個も集まったものを銀河といいます。銀河はその形から、大まかに楕円銀河、渦巻き銀河、棒渦巻き銀河、不規則銀河の4種類に分類する事ができます。しかし、なぜこのような形になるのか、どのように生まれたのか、どのように進化したのか、などまだまだ分かっていない事が多い研究分野です。

B班はプロの天文学者でもまだ決着がついていない最先端の研究テーマに挑みました。私たちB班は銀河の形は生まれつきの形なのか、それとも周囲の環境によって形は変わるのかについて研究をしました。方法として望遠鏡で銀河団を観測し、銀河団の中心と外側、また銀河団ではない領域(=フィールド)における楕円銀河と渦巻き銀河の割合を比較し、このテーマについて議論する事にしました。マカリィというソフトを用いて、銀河ひとつひとつの明るさを測る作業(測光)をしていきます。それに加えて今回は色ごとにBフィルター(青)、Vフィルター(緑)を用いて写真を撮る(撮像)することで、楕円銀河と渦巻き銀河の色の関係や密度も調べました。その結果、銀河団中心には楕円銀河の割合が多く、外側にいくにつれ渦巻き銀河の割合が多くなることが分かりました。

このことを用いて、どのように銀河が現在の形になったのかを議論した結果4つの仮説がたてられました。その仮説の中で有力なのは、密度の濃い中心部では渦巻き銀河がぶつかって楕円銀河になる、という仮説です。つまり周囲の環境によって銀河の形は変化すると結論づけました。

今回の観測ではこの仮説を完全に裏付けることができなかったため、最終日の夜に追観測も行いました。今後はこの追観測の結果も考慮し、銀河がどのように現在の形になったのかを議論したいと思います。

(記: 岩崎)
B班:議論の様子
B班:議論の様子

C 班: どんな星が超新星爆発を起こすのか?

一般的に星の最期の大爆発である超新星爆発は重い星が起こすことが知られています。C班は具体的に太陽何個分の質量を持つ星が超新星爆発を起こすのかを調べました。

C班ではM61、M42という2つの天体をHα線で観測しました。高温で輝く若い星は紫外線と呼ばれる光を多く出します。この紫外線は水素を電離(原子の中の電子を放出すること)させ、この時にHα線を出します。このHα線の強度から星形成率(1年に何個星が生まれているのか)を推定することができます。ここで、M42という天体は、過去に多くの観測が行われており、星形成率がすでに知られています。そこで、M61とM42のHα線の強度の比から、M61の星形成率を求めました。また、過去のデータからいくつの星が超新星爆発を起こしているのかを調べ、観測結果と合わせて、星何個につき 1 個の割合で超新星爆発が起きるのか、その割合を求めました。

これらから以下の図のように、重い星ほど個数が少ないという星の質量と個数の関係を用いて、計算していきました。その結果、太陽質量の86倍以上の星が超新星爆発を起こすことがわかりました。

C班:星の質量と個数の関係
C班:星の質量と個数の関係

計算が多く難しい内容でしたが、最後まで辛抱強く考える生徒の姿が印象的でした。また、予想より超新星爆発を起こす星の質量が予想より大きくなってしまい、生徒たちは半信半疑な様子でした。ここで終わらず自分たちの出した結論が正しいと、自信を持って言えるまで議論を進めてほしいと思います。この実習を通して、生徒に天文学の難しさや面白さが伝われば幸いです。

(記: 植村)
C班:解析の様子
C班:解析の様子

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