日時 | 2015/8/3 - 4 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県木曽青峰高等学校2年生生徒32名、および同校教員2名 |
担当者 | 猿楽、卯田、鈴木 |
東京大学木曽観測所において、木曽青峰高等学校理数科2年の32名を対象に天体観測実習「星の教室」を開催しました。実習では「宇宙の年齢を求める」ことを目標として、視角の求め方や距離と視角の関係などを学んだ後、銀河の画像を用いて銀河までの距離を求め、銀河が地球から遠ざかる速度と地球と銀河間の距離を用いて宇宙の年齢を求めていきました。
1日目は講義、望遠鏡見学と3つの実習を行いました。まず、開校式と宇宙の年齢を求めるための導入となる講義を行いました。講義では、天文学の歴史に触れ、望遠鏡の進歩で「より遠く」の天体のことがわかるようになってきたことが紹介されました。その後、望遠鏡ドーム前で記念撮影をしてからドーム内に移動し、シュミット型と呼ばれる口径105cm望遠鏡の見学をしました。生徒は望遠鏡の大きさや実際に動いている様子に圧倒されているようでした。
実習1「視角を使って距離を求める」では、簡単な講義の後、デジタルカメラを用いた実験を行いました。視角から推定したカメラから人までの距離と、メジャーで計測したカメラから人までの距離がほぼ等しいことを確認し、人の大きさと視角を使って距離を求めることができることを理解しました。順調に実習を行えたことで、夕立が降る前に実習1を終えることができました。
実習2「銀河までの距離を求める」では、銀河の大きさと視覚から距離を求めました。パロマ天文台にあるシュミット型望遠鏡から得られた銀河の画像やそれぞれの速度、形などのデータをまとめたデータベースから各班が自由に15個以上の銀河を選択し、紙に銀河の画像を印刷しました。印刷された銀河の大きさを定規で測り、測定値と望遠鏡の視覚から銀河の地球からの距離を求めていきました。距離を求めるために必要な銀河の大きさの測定方法については、各班ともしっかりと検討している様子でした。
実習3「宇宙の年齢を求める」では、実習2で得られた銀河までの距離のデータからどのように宇宙の年齢を求めるのか各班で議論しました。夜遅くまでアシスタントに質問する生徒もいて、真剣に取り組んでいる様子でした。また、実習と並行して夜空の観望会を行い、土星などを望遠鏡で見ました。実習の疲れから一息つける時間でもあり、とても楽しんでいる様子でした。
2日目は発表会の準備をした後、発表会とまとめの講義を行いました。発表会では、各班で求めた宇宙の年齢と、その過程をまとめ、班ごとに発表しました。発表会ぎりぎりまで議論をする班もあり、しっかりと考察しようとする姿勢が印象的でした。質疑応答では、自発的に質問する生徒もいたため互いの理解を深める一助になったと思います。
最後に、今回の全体の実習をまとめる講義が行われ、全員に修了証が渡されました。
意欲のある生徒は、自主的に班の垣根を越えて互いに議論を展開していました。ヒートアップせず、落ち着いて友達の話を聞いているのも印象的でした。また、「宇宙の年齢を求めよう」というテーマではありますが、答えが最先端の研究結果と近いかどうかではなく、「知識がない中でも知恵を振り絞ること」自体を重視しています。今回の実習が、生徒たちの今後の学習活動に役立つことを願います。