長野県屋代高等学校 星の教室

長野県屋代高等学校 星の教室

日時2015/8/28 - 8/29
場所東京大学木曽観測所
対象長野県屋代高等学校2年生の生徒34名
担当者三戸、森川、福島

星の教室は東京大学木曽観測所が主催する、中学生・高校生向けの宿泊型天文学実習プログラムです。 木曽観測所の近隣の学校をメインに、毎年数回にわたって、中学生・高校生が天文学を体験できる機会を提供しています。 今回の星の教室では、実習を通して「宇宙の年齢」を生徒のみなさん自身に測定してもらうことを最終目標としています。

全体スケジュール
全体スケジュール

1 日目

長野県屋代高等学校の方々が木曽観測所へ到着すると、今回の「星の教室2015」に関する説明の後、木曽観測所が有する105cmシュミット望遠鏡の見学が行われました。 巨大な望遠鏡が稼働した際には、その迫力に多くの生徒から歓声が上がり、ドームが回り始めると「まるで自分たちが動いているようだ」といった感想もありました。

望遠鏡見学の様子1
望遠鏡見学の様子1
望遠鏡見学の様子2
望遠鏡見学の様子2
その後は教室に戻り、実習その1「視角を使って距離を測る」を通して、生徒たちは「視角」とそれを用いた距離測定の方法について学びました。 ちなみに視角とは、目で見ている物の両端と目を結んだ二直線のなす角度のことを言います。 今回の星の教室の最終目標である「宇宙の年齢」を測る為にはいくつかのステップを踏まねばなりませんが、中でも実習その1で学ぶ「視角」は大変重要な考え方であり、生徒たちは実習の中で視角の持つ意味やその測り方、使い方について理解を深めていきました。

実習その1「視角を使って距離を測る」
実習その1「視角を使って距離を測る」
視角に関する実習の様子
視角に関する実習の様子
実習その2「銀河までの距離を求める」では、先程の実習その1を応用して、「The Galaxies for the Determination of the Age of the Universe」というデータベース上にある銀河からそこまでの距離を求めました。まず各班がインターネット上にある銀河のデータベースから、実習に用いる銀河を選びます。その後、望遠鏡で撮影した画像上の大きさを測って、銀河までの距離を求めるのに必要な視角を測定しました。最後に我々のいる銀河系の大きさを銀河の代表的な大きさと仮定し、この値と合わせる事で距離の算出に挑戦しました。
実習その2「銀河までの距離を求める」
実習その2「銀河までの距離を求める」
対象となる銀河を選んでいる様子
対象となる銀河を選んでいる様子
1日目の最後となる実習その3「宇宙の年齢を求める」では、実習その2で求めた各銀河までの距離に加え、データベースで値が与えられているそれぞれの後退速度(天体が我々の地球から遠ざかる速さ)を用います。 後退速度とその距離が比例する関係性を表すハッブルの法則から、宇宙の年齢を求める方法を生徒自身に考えてもらいました。 各班では活発な議論が繰り広げられ、中には実習後や翌日の早朝まで考察の時間にあてる班もありました。
実習その3「宇宙の年齢を求める」
実習その3「宇宙の年齢を求める」
議論の様子
議論の様子

2 日目

2日目を迎え、まず始めに実習のまとめに向けて各班での発表の方法に関する説明が行われました。ここから生徒たちは、これまでの議論から導かれた宇宙年齢の考察を紙面にまとめ、発表の準備を進めていきます。

いよいよ発表会が始まり、各班は自分たちの考察の結果をそれぞれオリジナリティあふれる方法で発表しました。発表資料に絵や色を多く用いることで視覚的に見やすい資料を作成する班もあれば、頭の中だけではわかりにくい事柄についてロールプレイング(寸劇)を取り入れて聴衆にわかりやすく説明する班もありました。

発表会の様子
発表会の様子

まとめ

今回の実習を通して、生徒のみなさんは視角という考え方から、遠くにある対象までの距離の求め方を学び、それを用いて銀河までの距離の測定に挑戦しました。 さらには銀河の後退速度と組み合わせることで、宇宙年齢の考察までを体験していただきました。 今回の経験を踏まえて、これからも大きな謎や問題が立ちはだかった時に、自分たちの頭で最後まで考え抜き、答えを導き出す姿勢を大切にしていってほしいです。

(記: 福島)

関連リンク