日時 | 2016/3/22 - 25 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 生徒36名 (中学3年生~高校3年生) |
担当者 | 三戸、猿楽、諸隈*、大谷*、鵜山*、卯田、陳、植村、井口*、谷口、鈴木、渥美 (*印はScience Station以外のスタッフです) |
長野県にある東京大学木曽観測所にて第19回目の銀河学校を開催しました。北は北海道、南は沖縄からと、文字通り日本全国から集まった36名の中学生・高校生たちが口径105cmシュミット望遠鏡を用いた天文観測実習を行いました。実習ではA,B,Cの3班に分かれて、それぞれのテーマに取り組みます。 幣法人からは8人のスタッフが参加し、実習における学術的な指導及び、3泊4日にわたる共同生活をサポートしました。
A班は「天の川 ペルセウス座-カシオペア座領域を探れ!」というテーマで研究を行いました。
天の川は私たちの住む銀河系を内側から水平方向に見渡した姿です。天の川付近の領域にはたくさんの星の他に様々な天体が存在します。A班は特に、
A班の実習はデータ量が多く、測光にほとんどの時間を割くことになりました。とても根気のいる作業でしたが、メンバー全員が最後まで集中して作業をしていた姿が印象的でした。また、最終日には遅くまで議論する光景も見られました。この実習を通して生徒に天文学の面白さを学んでもらえたのではないかと思います。
B班は「超新星爆発、新星爆発」について研究しました。超新星爆発は巨大な星が長年燃え続けた結果、大爆発を起こす現象です。また、新星爆発は二つ以上の星の系において、密度の低い星から密度の高い星へガスが流れ、ある一定以上のガスが降り積もると表面に強い爆発が起こる現象です。
この班のテーマは「過去に得られた超新星・新星爆発のデータと現在を比較し、どんな変化が起きているのか」を調べることです。
観測所に到着をしてから施設見学・講義を終えた後、木曽観測所の望遠鏡を使い、目的の天体であるカニ星雲(M1)とGK perseiという星を観測しました。なお今回N6590(Hα)という水素の特有の光を通すフィルターを使用しました。
得られた生のデータにはデータを乱すノイズが入っています。このノイズを取り除く一次処理と呼ばれる作業を行いました。その後、約60年前に得られたデータと自分達によって得たデータを比較しました。生徒から「昔に比べて中身がスカスカ」という意見や、「超新星爆発から出た星が運動している」といった多数の意見が出ました。この中から「星が運動している」という意見を参考に、「どのくらいの速さで運動しているのか」「等速運動をしているなら、過去に遡れば超新星爆発の中心を見つけられるのか」について考察しました。
解析の結果、毎秒3000kmという光速の100分の1の速度で運動をする星がありました。また超新星・新星爆発が起きた年は文献からわかっているので、速度と時間の関係から2つの天体の大きさを見積もりました。その結果、星の運動を等速運動として考えると実際の大きさと矛盾が生まれてしまうことがわかりました。そのことから爆発で吹き飛ばされた星は等速運動ではなく、何らかの原因で外力が働き、加速度運動をしているという考察に至りました。毎秒3000kmという地上では想像がつかないような結果を手にすることができました。
生徒は本当にその結果が正しいものなのかを、再度データ解析や考察を夜遅くまで熱心に取り組んでいました。確信を持って意見を言うためには正しい理論と正しい解析が必要だということを身をもって経験できたと思います。この経験を糧に今後の学生生活を頑張ってほしいと思います。
宇宙には、星や星雲の他にもダストと呼ばれる固体微粒子が漂っています。ダストは宇宙の低温度環境で分子の化学反応の促進に役立つほか、積もれば地球のような固体惑星の材料になるなど、生命の誕生にも欠かせない存在です。そのような背景を踏まえて、C班では「星間減光の分析から宇宙に漂うダストを探る」というテーマのもとに研究をすすめました。
C班はセファイド変光星と呼ばれる星と標準星の明るさを観測・解析することにより星の減光率を明らかにした後、ダストの大きさなどを予想していきました。1日目は、まず生徒たちがダストについて各々のイメージや知っていることなどを出し合いました。その後、班長から宇宙の歴史などを交えてダストについての説明を受け、解析手法について学び、観測に移りました。C班は銀緯約0度、銀経約150度と160度の2領域に含まれる5つのセファイド変光星を今回のターゲットとしてV、B、Iバンドを用いて観測しました。
2日目は、観測した画像データから星の実際の明るさを計算する作業に時間を取られましたが、根気よく作業をすすめていました。その後、測光作業に移りセファイド変光星と標準星(真の見かけの明るさが既に調べられている星)の見かけの明るさを調べ、班長による講義を交えつつ真の明るさを計算しました。そして、見かけの明かるさから真の明るさを引くことにより星の光が地球に届くまでに失われた総光量を導き、それらの各バンドのデータを差し引きすることで距離による減光量を除外してダストによる減光量のみを考えることができました。また、これら各バンドの減光量からダストの大きさを特定していきました。
3日目には、発表会に向けてこれまでにまとめたデータについて文献値と比較、再検討を行い自分たちなりの考察をしていきました。その結果、ダストは銀河の腕の部分に多く存在しているのではないかと考えることができました。発表会が終わった後も翌日のポスター発表に向けデータの確認などを繰り返し行っていました。
計算量の多いテーマのなか、中学生の参加者もいましたが高校生で習うような計算は上級生が率先して教え、互いに助け合っている姿が印象的でした。生徒たちは他にも概念などで分からない箇所があればすぐに班長やアシスタントである我々に積極的に質問しており、分からないことをうやむやにしない姿勢は今後も大切にしてほしいと思いました。