日時 | 2017/10/6 |
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場所 | 東京大学本郷キャンパス |
対象 | 島根県立松江北高等学校理数科2年40名および教員5名 |
担当者 | 末松、金子 |
研修旅行の一貫として東京大学本郷キャンパスの見学に来た島根県立松江北高等学校理数科2年生の生徒達に講義を行いました。
講師の末松は東京大学大学院の博士課程の学生であり、まず大学院生の学生生活について紹介しました。決まった時間割がなく、自己責任で自由に研究を進めていく大学院での過ごし方は高校生には新鮮に聞こえたのではないかと思います。
その後、本題の地球の熱などのエネルギーは大気を介してバランスが取られていることについての説明に移りました。
前半では大気科学が気象学と気候学に大きく分けられることを紹介しそれらの違いについて説明することで、大気科学がどういうことを問題とする学問かについて理解を深めてもらうことを目指しました。具体的には気象学は、水蒸気の凝結による潜熱解放や放射冷却など、地面から大気圏のエネルギーバランスを大気が取る過程で起きる諸現象について解明する学問であり、 気候学はエネルギーバランスが達成された後の地球の平均温度などの平衡状態を説明する学問であるということを伝えました 。また、前半の最後には講師の末松が取り組んでいる研究の内容や、現在の気象学の課題についても紹介しました。
休憩を挟み、後半では実際に温暖化の計算をする 実習を行いました。具体的には前半の講義の内容を踏まえ、後半のテーマである 『地球温暖化問題はなぜ難しいか』を現在の地表面の平均温度が絶対温度で288K(15℃)になることと、大気を太陽放射に対しては透明で地球放射に対しては不透明であることを仮定する灰色大気モデルを用いて温室効果ガスを増やした時の平衡温度の変化を実際に計算することで実感してもらいました。ここでは6人から7人ずつの班に分かれて班のメンバーで協力して地球が大気の無い反射率0の黒体だった場合の平衡温度である黒体温度と地球の反射率を考慮した場合の平衡温度である放射平衡温度を計算した後に地球の大気による温室効果を考慮する灰色大気モデルを用いて現在の地球の平衡温度を計算してもらいました。さらに、 温室効果ガスの増加を灰色大気モデルに当てはめて平衡温度を計算した時に平衡温度が高くなる事を確認してもらうことで地球温暖化の仕組みの理解を深めてもらいました。班によっては実習を難しく感じたところもあったようですが、最終的にはすべての班で正しい計算式を導き答えの温度を計算することができました。最後に、温暖化が何度進むかが決定できていないことを始め具体的にまだ解明出来ていないことを紹介し、温暖化問題がなぜ難しいかについて考えてもらいました。
気象学と聞くと天気予報を連想する生徒が多かったのではないかと思いますが、本実習を通して地球のエネルギーバランスを保つ過程で起きる現象を理解するための気象学、そしてその結果エネルギーバランスが達成された状態がどのようなものであるかを理解するための気候学という視点で大気科学を捉えられるようになったのではないかと思います。