日時 | 2017/12/8(金) |
---|---|
場所 | 島根県立松江北高等学校 |
対象 | 普通科理系および理数科の2 年生 |
担当者 | 鹿熊、橋立、渥美、沖本、田中舞、森(SS外部,東京大学 理学部所属)、卯田、所、西原、植村、島田、安田 |
島根県立松江北高校で普通科理系と理数科の2年生を対象に出前授業を行いました。生徒たちは
谷口の授業では、日頃の実験とその解析においていかに誤差の取扱いが大切かについて取扱いました。
日頃高校生が授業で実験をする時、実験結果から導いた値が教科書に載っている値と異なった場合、実験で何か間違ったことをしたから、あるいは実験が下手だったから、値が異なったと考えてしまう高校生が多いと思います。しかし、実際には「誤差」がどのくらい生じているのかを見積もってその影響を考える必要があります。
そこで、今回の授業では「重力加速度の測定」という高校生が授業で取扱うことが多い内容をテーマにして、実験誤差がどのように生じるかについて考えてもらいました。多くの生徒は実験を始める前は日頃慣れない誤差という考え方について戸惑う様子も多く見受けられましたが、実際に手を動かして実験してみるにつれ、「こんなとこからこのくらいの量の誤差が生じているんじゃないか」、「こういう工夫をすれば誤差を減らせるんじゃないか」といった議論を活発にし始めるようになりました。
今回の機会を活かし、今後も生徒が誤差について互いに議論しながら実験を進める習慣がつけば幸いです。
この講座では、初めに太陽や地球の大きさを身近なスケールに置き換えることで、宇宙の大きさを体感してもらいました。その後、宇宙に関してのクイズ、天文学者であるHubbleの研究について触れ、宇宙が膨張していることについて説明しました。そして最後に講師が研究している現代天文学について語りました。
講座では、生徒に参加してもらう活動を二つ行いました。一つ目では、生徒たちが宇宙について想像できるものを付箋に書き出してもらいました。積極的に発言する生徒がいる机は議論が活発に行われている様子でしたが、一部の机ではあまり案が出ていないところもありました。
次に二つ目では、班に分かれて望遠鏡の写真から銀河をさがす活動を行いました。初めの活動では静かだった机も会話が弾み、各々が講義を聞いて盛り上がっている様子が伺えました。答えが出せた班から講師の方から正解を教えてもらいました。その後、なぜそれが正解なのか講義の内容と結び付けて理解を深めました。
「月と地球の地球惑星物理」というタイトルで「月」に関する授業を行いました。まず、月が地球に同じ面を向けているのは、月の自転周期と公転周期が等しいからだという説明をしました。これは月の同期現象によるもので、偶然ではありません。 同期現象とは潮汐力による衛星の変形の影響で、月の自転周期と公転周期が同じになる現象のことです
その説明の後、月の軌道へと話題が移りました。高校生には地球の公転軌道に対して、月の軌道はどのようになるのかを予想してもらいました。近くの人と楽しそうに相談する様子が印象に残っています。さらに、講師からのヒントをもらいながら、黒板を使い、みんなでどのような軌道になるのかを考えました。その後、Pythonというプログラミング言語を用いた計算結果も使いながら、月の軌道がいびつな十二角形のような形になることを示しました。また、月と地球との距離を変えることで、生徒が予想したような軌道にもなりえるという話もありました。実際に自分で軌道を考えることで理解も深まったかと思います。
月食やスーパームーンの話もありました。スーパームーンは天文学の正式な用語ではなく、目の錯覚や心理的要因によるものと言われているそうです。最後に馬蹄軌道という変わった小惑星の軌道の話をして、この授業は終わりました。 休み時間や授業後に講師にわからないことを質問する場面もあり、生徒は授業の内容に興味を持ってくれたようです。
この授業では物理と数学を使って芸術作品を作成することを目的と して、コンピュータでプログラミングをして作品を制作しました。 授業には17人の生徒が参加し、 「processing」という言語を用いたプログラミングに取り組みました。
まず導入として「イベントなどで用いられているプロジェクションマッピングには 様々な科学技術が必要であり、科学技術と芸術には深いつながりがある」という話をしました。
実習では多数の物体がお互いの重力で引かれ合って運動するという作品を作りました。 班ごとに物体の色や大きさ、重さなどを変えて個性的な作品に仕上がっていました。
プログラミングをするのが始めての人が多く、初めは大変そうでしたが、実際に作品を 作り始めると楽しそうにコードを書いている姿が印象的でした。
この授業は磁性をテーマに行いました。まず、宇宙構造には磁石があるとその周りに発生する「磁場」が関係しているものもいくつかあることを説明し、様々な物質の磁性について研究する意義について伝えました。たとえばオーロラは,太陽から放出されて地球にたどり着いた物質が,磁場によって北極・南極付近に引き寄せられることで発生する現象です。
次に後半の実験に関わる、磁場のでき方や磁性体(磁気を帯びる物質)の分類などの磁性の知識と大まかな実験内容について説明がありました。馴染みのない記号や難しい式が多い中でも狼狽えずに質問する生徒が見られました。
後半の実験では紐と台、永久磁石、グラファイトを用いて炭素の磁化率を測定する実験を行いました。 磁化率とはある物質の周囲に磁石があるときにどの程度が磁気を帯びるかを示す物質固有の値です。実験開始直後は具体的な実験操作の指示は出さなかったのですが、各々が試行錯誤しながら楽しそうに実験を進めている様子が印象的でした。
田中の授業では、紙飛行機に風を当てたときの様子を調べる実験を通して、流体力学という学問の基礎を学ぶことを目的としました。
流体力学は、我々の身の回りの様々なところで使われています。例えば、自動車の設計や風力発電などです。流体には、高校で学ぶ力学に登場する概念とは以下のような違いがあります。
空気や水は力を加えることで大きく変形するので、質点や剛体として扱うのはナンセンスであり、こういったものの運動を記述するための学問が流体力学なのです。
流体力学の理論の中でも、紙飛行機を考えるうえで特に重要な部分「層流と乱流」、「揚力と抗力」、「境界層とその剥離」についてはスライドを用いて説明しました。
層流とはのどかな川の流れのように、整った流れを言います。「ねばねば」した流体は層流を作りやすく、はちみつなどが典型例です。反対に、乱流とは湯気などのように複雑な渦となるような流れを言います。「さらさら」した流体は乱流になりやすく、また、低速では層流である流れも、流れる速さが大きくなれば乱流になります。水道水の蛇口を調整することで、層流と乱流の違いを観察することができます。
流体中を運動する物体が受ける天地方向の力を揚力、進行方向と平行な向きに受ける力を抗力といいます。一般には、揚力は大きく抗力の小さい状態が望ましいこと*、飛行機などの設計においてこれらの力が非常に重要になることを説明しました。
今回の実習テーマである風洞実験は「流れを可視化」する実験です。実験装置が小規模なものであったため、揚力と抗力の測定は行いませんでした。それでも紙飛行機の機体ごとに流れは異なり、違いを考察することができます。鍵は「境界層のはく離」です。
通常、流体は物体に近づけば遅くなります。境界面では粘性の働きで摩擦が起きるからです。流体は物体との境界面で物体と同じ速度になります。ところが、物体の形状や流体の速さなどに依存して、物体との境界付近で逆流が起きることがあります。このような状態を「境界層はく離」と呼び、物体の前方ではなく、物体の後方で起きます。このような状態となってしまうと、抗力が急激に増大するので、飛行機などの設計においては非常にまずいことだと言えます。物体付近で渦が生まれるかどうか、風洞実験における観察すべきポイントを先に紹介しました。
実習中は各班4人程度に分かれて、紙飛行機を作ってもらいました。紙飛行機を作ったグループから実験装置内に紙飛行機を置き、流れを観察しました。途中で、「翼に膨らみを持たせたらどうなるか?」などのアドバイスを送りました。どの生徒も意欲的で、休憩時間中も作業に取り組んでくれたので、時間があっという間に過ぎていきました。
実習後の残り時間(約20分)はアシスタントの卯田から「流体力学の歴史」「カオスと乱流」などの切り口から講義を行いました。概念的な話が多かったのですが、高校生にわかりやすくなるように構成を工夫しました。最後に、流体力学と他の分野との関係性について説明し、大学でどのような分野を専攻することになっても、誇りを持って取り組んでほしいとメッセージを送りました。
この講座では「宇宙人はいるのか」という簡単な疑問から始め、具体的に生物が存在する条件を化学や生物の知識を使って考えました。
まず講義を始める前に、「宇宙生物はどのような見た目か」という問いに対して色鉛筆を用いて絵を描いてもらいました。 その後、生命が存在するための条件、生き物の姿形の進化の仕組み、居住環境についての講義を生徒に聞いてもらいました。そして最後に、再び宇宙生物の絵を描いてもらいました。生徒が描いた生物の姿を講義の前と後で比較すると、大きく変化しました。講義の前では漠然としたイメージで描かれていたケースが多かった絵が、講義の後では、その生命がどのような環境にいるのかなどといった具体的な理由を踏まえた絵に変わりました。