日時 | 2018/7/24 - 25 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県屋代高等学校 生徒37名 、教員2名 |
担当者 | 杉山、*竹越、*岩切、*諸隈 (*印はScience Station以外のスタッフです) |
「星の教室」は、毎年東京大学木曽観測所で開催されている一泊二日の実習プログラムです。今回の実習では、銀河までの距離を測定し、銀河までの距離と後退速度をもとに宇宙の年齢について考察しました。
イントロダクションの後、木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡の見学を行いました。望遠鏡をあらゆる角度から見たり、 その構造についての話を伺ったりして観測機器への理解を深めていました。動く巨大な望遠鏡に、生徒たちは歓声をあげていました。
教室に戻り、班に分かれて「視角を使って距離を求める」という内容の実習1を行いました。視角という概念について解説した後、デジタルカメラで撮影したポールの視角を求めることで、写真上の物体の長さと視角の大きさを対応させました。物体の視角、大きさ、物体までの距離の関係を理解したところで、写真から視角距離を求める実習に移りました。班員を撮影して、その写真と班員の平均身長を用いてカメラから班員までの距離を求めました。視角距離と実測距離が概ね一致して生徒たちも満足していました。
写真から被写体までの距離を算出する方法を会得したところで、「銀河までの距離を測る」という内容の実習2を行いました。全ての銀河の直径が天の川銀河の直径と等しいと仮定して、データベースから15個程度の銀河を選び、その視角からそれぞれの銀河までの距離を計算しました。どのような銀河を選ぶべきか、銀河の直径をどう定義するかという議論が活発に行われていました。
実習3では「宇宙の年齢を求める」という最終目標を達成するために、実習2で求めた銀河までの距離とデータベースから参照した銀河の後退速度をグラフにプロットしました。グラフからハッブルの法則と同じく比例関係を見出し、宇宙年齢を求めようという方針でしたが、多くの生徒が苦労していました。データが美しく一直線に乗らないグラフを読み取るために、様々な工夫がなされていました。中にはグラフを2次関数として読み取り、独創的な宇宙の姿を描像している班もありました。
最終日となる2日目には、 それぞれの班が求めた宇宙年齢と、その算出の過程を発表しました。「天の川銀河の直径を全ての銀河の直径として用いるため、計算には同じタイプである渦巻銀河を選んだ」という班や、「15個のデータでは不正確だと考え、さらに30個のデータを増やして計算した」という班など、正確な結果を得るための各々の工夫が語られていました。また、質疑応答にはたくさんの生徒が参加していました。あるシーンでは宇宙が膨張する中心はどこなのかという疑問に対して議論が交わされ、生徒が現在の宇宙像と全く同じものを自ら考え出しました。高校生の発想力には講師陣も舌を巻きました。
疑問に対して積極的に立ち向かう生徒たちの姿を見て、こちらも身が引き締まる思いでした。実習を終えた生徒たちの感想を読んでみると、 「難しかったけれど面白かった」というような言葉が多数見られました。悩み抜いた末に結論を導き出すという過程を楽しんだという経験は、今後何かを研究する上での糧になると思います。
「星の教室」開催にあたり、東京大学より 諸隈智貴助教、竹腰達哉特任助教、修士2年 岩切友希さんにご協力していただきました。協力していただいた皆様に心から感謝の気持ちと御礼申し上げます。