日時 | 2018/08/20 - 21 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 長野県木曽青峰高等学校理数科36名、教員2名 |
担当者 | 菊地原*(東京大学)、中島*(国立天文台),坂井 (*印はScience Station以外のスタッフです) |
「星の教室」とは、毎年東京大学木曽観測所で開催されている一泊二日の実習プログラムです。 今回の実習では、観測天文学において重要な視角の概念を理解し、視角を用いて銀河までの距離を推定し、 銀河までの距離と後退速度の関係から宇宙の年齢について考察しました。
木曽観測所に到着して早々、講師である中島先生から天文学の概観についての講義がありました。 続いて講義の終了後、木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡の見学が行われました。 鏡筒の中や望遠鏡の回転部を興味津々と覗き込む、好奇心旺盛な生徒の姿が印象的でした。
見学から教室に戻り、最初の実習「視角を使って距離を測る」を行いました。視角とは見かけの大きさと実際の距離を結びつけるものです。 まずこの視角の概念と距離への変換について学びました。その後、ポールを持って外に出て視角の実験を行いました。 デジカメを使ってカメラから離れたポールを撮影し、視角で求めたポールまでの視角距離と実際の距離が近似できることを確認しました。
次に、実際に銀河までの距離を測りました。観測所の方で用意していた銀河の画像を印刷し、 全ての銀河の大きさを銀河系と同じであると仮定することで視角を使って15個以上の銀河までの距離をそれぞれ求めました。
最後に、求めた銀河までの距離と、観測所がまとめておいた銀河のカタログから調べた銀河の後退速度の間に関係を見出し、 宇宙の年齢について考察しました。銀河の後退速度とは、それぞれの銀河が地球から遠ざかるように離れていく速度のことです。難しい問題に対して班内でアイデアを出し合い熱心に議論していました。
夜間には観望会を行い、火星や土星などを望遠鏡で覗き込みました。 当日は天気が心配されており、夕食時には降雨などもありましたが、 運よく夜間には雲間が見られ、星を見ることもできました。
2日目には1日目に行った宇宙年齢についての議論や考察をまとめて、発表会を行いました。 まず1日目の議論の内容を復習しながら用紙にまとめ、各班持ち時間10分ほどで発表をしてもらいました。 どのように説明すればわかりやすいか、どのような図を使えば言いたいことが伝わりやすいかなどと試行錯誤している様子が印象的でした。
今回の実習プログラムの最後には、木曽観測所の30cm望遠鏡を使って金星の観測をしました。 望遠鏡を使うことで昼にも惑星や明るい恒星を見ることができることに驚き、感動している様子でした。
この実習を通して、学校で経験することができる学習経験とはまた違う、 難しい問題に対して議論を重ねて仮説を立案・検証するという新しい学びを経験していただけたと思います。 今後の学校生活、ひいては人生に役立てていただけたらと思います。
「星の教室」開催にあたりまして、東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター 大澤亮特任助教、国立天文台 特別研究員 中島王彦さん、 東京大学宇宙線研究所 修士課程2年菊地原正太郎さんにご協力いただきました。心からお礼申し上げます。