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サイエンスカフェ in 松江

日時2019/12/14(土) 13時半?16時半
場所興雲閣(松江城内)
対象公開イベント
担当者秋山、小形、岡本、沖本、鹿熊、河村、坂井、島田、鈴木、田中、谷口、照井、松沢、安田

概要

Science Station (以下、SS)では、毎年、島根県立松江北高等学校と連携して「サイエンスカフェ in 松江」というイベントを開催してきました。このイベントは、カフェのような場所でお茶をしながらサイエンスについて語らうことを目的とするものです。今年は松江北高校とSSが共催する形で、SSメンバー2人がトークを行った他、松江北高校理数科の生徒さんたちが研究発表を行いました。

トーク1: 飛行機から学ぶ風の流れ

講師: 田中 舞 (早稲田大学 先進理工学部 物理学科 4年)

このトークは高校の授業では扱われない「流体力学」という学問の入門として行われました。

前半では、高校物理での考え方と実際の運動では違いがあることを説明しました。流体の運動では「変形・移動」、「層流・乱流」、「揚力・抗力」、「境界層剥離・剥離」の4種類の特徴があることを紹介し、それらを反映させた学問、流体力学について触れました。

後半では4種類のうち「剥離」についてさらに詳しく、実際に「剥離」の現象が起きている動画を用いて説明しました。剥離が起こらないような形状が研究されていることを紹介し、最後には流体力学が応用されている例として航空機の紹介を行いました。

質疑応答では発展的な内容を聞く生徒が多く、例えば、航空機が通常とは異なった動きをした場合に周囲の空気の流れはどのようになるかといった質問が出ました。

トーク終了後には流体力学に関わる課題研究を行っている生徒から、紹介した例以外にどのような例があるかアドバイスを求める声もありました。

田中によるトークの様子
田中によるトークの様子
(記: 島田)

トーク2: AIが教えてくれる宇宙の秘密

講師: 谷口 大輔 (東京大学大学院 理学系研究科 天文学専攻 修士2年)

このトークは、近年研究や応用が活発に行われているAI(人工知能)が天文学の分野でどのように役立てられているのかをテーマに行われました。とりわけ現在のAIの主流となっている、データからルールを学習させて答えを導かせる機械学習に関して、天文学の研究における具体的な応用例を2つ紹介しました。

一つ目は銀河の形の分類への応用です。銀河は、渦状構造を持つ渦巻銀河と、それを持たず滑らかな楕円状の形をした楕円銀河に大別されます。宇宙に存在する膨大な数の銀河を、人の目で一つ一つ分類するのは時間がかかり過ぎてしまいます。そこで「畳み込みニューラルネットワーク」という画像認識を得意とする機械学習が有効に使われています。今回のトークでは、渦巻銀河か楕円銀河かを99%の精度で自動で判別することに成功した研究を紹介しました。

二つ目は星団の探索です。多くの星の中に埋もれた星団を探す時に有効なのが「DBSCANアルゴリズム」です。これは与えられたデータの集合を、類似する性質を持ったグループに分類することができる機械学習です。今回のトークでは、位置と速度の合計6次元の値が似た恒星の集団を探すことで自動的に星団を多数発見した研究を紹介しました。

機械学習を使った分析はこれからの時代の研究に不可欠と言われており、最近はニュースで取り上げられることも増えてきています。しかし、その実態を知る機会は普段の生活ではまだ少ないです。このトークを通して聴衆の皆さんがAIに対する関心を強くし、詳しく学ぶきっかけにしていただけると幸いです。

谷口によるトークの様子
谷口によるトークの様子
(記: 松沢)

謝辞

本イベントは島根県立松江北高等学校と共催で行い、同校の先生方に多くのご協力をいただきました。厚くお礼申し上げます。

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