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島根県立松江北高等学校東大見学出前授業

日時2019/10/11
場所東京大学本郷キャンパス
対象島根県立松江北高等学校理数科2年40名および教員5名
担当者鈴本、谷口

概要

研修旅行の一貫として東京大学本郷キャンパスの見学に来た島根県立松江北高等学校理数科2年生の生徒達に授業を行いました。

講義: 「モノを惑星まで送るには?」

講師: 鈴本 遼 (東京大学)

ロケットに積んだ人工衛星を水星や木星などの太陽系の惑星まで送り届けることがどのくらい大変か、ということをテーマに授業を行いました。授業では、講師の簡単な自己紹介の後、生徒に実際に手を動かして計算をしてもらう演習を混じえつつ、ロケットを打ち上げて更に惑星まで届ける過程について学びました。

講義風景
講義風景

まず最初に、地球上から地球の外にロケットを飛ばすのがどのくらい大変なのかを学びました。宇宙空間にいるロケットは、何も力を加えないとそのまま真っすぐ進み続けます。このロケットに燃料を使って力を加えることでロケットの速度(向きや速さ)を変化させ、それによってロケットの進行方向を制御するのです。この変化させた速度の大きさのことを⊿V(デルタ・ヴイ)と呼び、⊿Vだけ速度を変化させるのに必要な燃料の量を表した式のことをロケット方程式と呼びます。

このロケット方程式を導きそして使うためには、万有引力の法則や円運動の式などの高校物理で習いたての式を数多く使います。これらの理解を助けるために、ロケットを飛ばして地球の周囲を周回させるために必要な燃料の量などを生徒に実際に計算してもらいました。その結果、ロケットの総重量の約9割という非常に多くの燃料を用いなければならないことが分かり、生徒からは驚愕の声も聞こえてきました。

計算風景
計算風景

ここまででロケットを打ち上げる大変さが分かったので、続いて、地球から打ち上がったロケットを惑星まで届けるために必要な⊿Vを計算しました。太陽系のそれぞれの惑星に行くために必要な⊿Vの計算結果は水星が一番大きく、実は遠くの惑星よりも水星に行く方が大変であるということが分かりました。この水星に行くための⊿Vを得るために必要な燃料もまた非常に多く、惑星の重力を利用して⊿Vを得るスイングバイというテクニックや、電気で大きな⊿Vを得る電気推進というテクニックについてもお話しました。

今回の授業では、人工衛星を惑星まで運ぶのがいかに大変かということを、実際の計算も混じえて高校の物理の応用で学びました。授業の最後に生徒に贈った「進路選択では学科の名前に惑わされずにその学科で何が学べるかをしっかり調べることが重要だ」というメッセージも合わせて、今回の授業は、生徒が宇宙や物理の理解を深め、今後の進路選択の参考とすることに役立ったのではないかと思います。

(記: 谷口)