日時 | 2019/3/26 - 3/29 |
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場所 | 東京大学木曽観測所 |
対象 | 生徒26名(中学3年生~高校3年生) |
担当者 | 新納*、大澤*、菊地原*、三井*、島田、杉山、植村、坂井、丹羽、大島 (*印はScience Station以外のスタッフです) |
長野県にある東京大学木曽観測所にて、銀河学校2019を開催しました。
全国各地から26名の生徒が参加し、世界初の広視野高速CMOSカメラTomo-e Gozenを搭載した木曽105 cmシュミット望遠鏡を用いて天文学の研究に挑戦しました。生徒はA班とB班に分かれ、主体的に解析や議論を行い、充実した3泊4日になりました。 幣法人からは6名が参加し、生徒をサポートしました。各班の実習内容と生徒の様子について報告します。
宇宙には様々な突発的な爆発現象が起こっており、多くの人によって研究されています。しかし、その原因の多くがまだ分かっていないのが現状です。そこでA班では、突発的な爆発を起こした天体を含む銀河を調べることで、それぞれの天体の性質を研究しました。観測したのは以下のそれぞれの天体を含む銀河3つです。
1日目の観測は突然の悪天候により上手くいきませんでしたが、なんとか深夜帯に観測データをとることができ、2日目に解析を開始することが出来ました。g、r、iバンド(順に緑、赤、近赤外の光のみを通すフィルターを通った光の波長)とHαバンド(水素から出るHα線と呼ばれる光のみを通すフィルターを通った光の波長)で観測したデータを、班長から与えられた知識を用いてそれぞれ手分けをして解析し、苦戦しながらも目標の天体を含む銀河の等級を割り出しました。出てきたデータは考察するのには難しいものでしたが、それぞれの突発的な爆発天体とそれを含む銀河の性質を自分たちなりに考えて結論を得ました。生徒は最終的に、ガンマ線バーストは年老いている星が多い銀河、Rapid Transientは明るい不活発な銀河、中性子星同士の合体は星生成が不活発な銀河において発生した爆発現象であったと結論づけました。
最初は、生徒を1班3-4人の数グループに分け、各グループをティーチングアシスタントが指導しつつ班長が全体を指揮するという形をとりました。しかし次第に生徒が主体的に行動しはじめ、2日目の午後には各グループの内容のまとめや全体の指揮など各々の役割が生徒主導で決まるようになり、その後も生徒が自分たちの力で研究を進めていました。
3日目の口頭発表会では自分たちの研究内容についてしっかりと説明し、質問に対しても的確に答えることができました。さらにそれだけで終わらず、口頭発表会で質問された内容をまとめて最終日のポスター発表会に活用していました。
一般に、光は色々な波長の成分に分解できます。星の表面温度は、その星の放つ光の量が最大となる波長(ピーク波長)と表面温度の関係を表すウィーンの変位則という法則を利用して求めることができます。しかし、表面温度が極めて高い星の場合は周辺のガスなどに短い波長の光が吸収されてしまうため、ピーク波長が容易には分からずウィーンの変位則で表面温度を求めることができません。今回はそのような星である白色矮星を中心付近に持つ惑星状星雲を3つ対象として、どのようにすれば中心天体である白色矮星の表面温度を求められるかを考えました。
B班では、天体からの短い波長の光が水素原子ガスに吸収され再放射されることでHα線と呼ばれる光として観測できることを勉強しました。その後、対象とする惑星状星雲を班長が用意した8つの候補の中から3つ選び、木曽観測所の望遠鏡を使ってそれらの惑星状星雲をrバンド(赤の光のみを通すフィルターを通った光の波長域)とHαバンド(Hα線のみを通すフィルターを通った光の波長域)で観測しました。
2日目にrバンドとHαバンドでの光量を解析して星雲全体から放射されるエネルギー量を求め、そこから各バンド間での光子数の比を求めました。先行研究により光子数の比と中心天体の温度との関係が知られているので、これを利用して中心天体の表面温度を推測することができます。この手法を用いて、生徒たちは3つの惑星状星雲の中心天体がいずれも20,000~35,000 K程度であると求めました。その後、生徒たちは表面温度について得られた結果の誤差を評価しました。すると、観測結果から想定される誤差は3%程度と十分に小さいことがわかりました。一方で、先行研究と比較してみると、求めた表面温度は先行研究よりも小さい値となっていました。この差が何によって生じたのかを、用いた仮定の問題点などの様々な面から議論しました。
3日目には今までの観測や議論をまとめ、口頭発表会をしました。質疑応答ではA班の生徒から鋭い質問が出て、より議論の幅をひろげるきっかけとなりました。口頭発表会後には4日目のポスター発表会に向けてさらに議論を深めていきました。
生徒は自分たちが出した結果が妥当なものであったのかを活発に議論していました。実習の内容は非常に高度なもので、簡単には理解できないものも多かったように思いますが、なんとか理解しようと生徒間で質問をするなど積極的に行動している様子が見られました。分からないものを分からないままにしたくないという気概を今後も大事にしていってほしいと思います。