講義写真

銀河学校2020

日時2020/8/9 - 8/11
場所オンライン開催
対象3 月に参加予定だった 24 名のうち 19 名(3 月時点で高校 1 年生~高校 3 年生)
担当者大澤*、高橋*、菊地原*、紅山*、大島、坂井、島田、丹羽、嶋田、大村
(*印は Science Station 以外のスタッフです)

銀河学校 2020 をオンラインで開催いたしました。3 月上旬までは例年通り 3 月末の木曽観測所での開催へ向けて準備を進めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、8 月への開催延期を決定しました。さらに、感染状況の収束が見込めないことから、6 月に現地開催を断念し、オンライン開催を決定しました。幣法人からは 6 名のスタッフが参加し、初めての試みとなったオンラインでの銀河学校をサポートしましたので報告します。なお、1 日目に行った講義の動画を公開していますので、そちらもぜひご覧ください。

参加者は Web 会議システム Zoom を用いてオンライン上に集まりました。木曽観測所がホストとなり Zoom を開設しました。そこに 2 名の班長と 8 名の TA(ティーチングアシスタント)、19 名の生徒がそれぞれの家から参加しました。2・3 日目の解析の際は班ごとのブレイクアウトルームを使用しました。さらに、参加者全員がチャットツール slack に参加し、お昼休憩中や夜にも気軽に質問や雑談ができる環境を整えました。また、複数人で同時に編集ができる Google スプレッドシートと Google スライドも効果的に活用して解析を行いました。


【1日目】
14 時に開校式を始め、その後自己紹介を行いました。事前に準備したスライドを表示した状態で自己紹介を行う形式で、生徒、TA、班長、木曽観測所スタッフの全員で初めての顔合わせとなりました。直接顔を合わせることのできない状況でもそれぞれの個性を感じられる、和やかな自己紹介となりました。

次に、「天体観測の入口」と題して、天体観測とは何か、観測によって得られるデータはどういう形式であるか、2 日目に行う解析の基礎知識などの内容の講義を行いました。さらに、班長 2 人に、日頃行っているそれぞれの研究の目的や特徴、観測の手法などについて講義していただきました。生徒からたくさんの質問が出て盛り上がりました。生徒は、実際に天文学者がどのような研究をしているのかを知ることができ、とても良い刺激を得たと思います。

講義「天体観測の入り口」
講義「天体観測の入り口」

続いて行った木曽観測所ツアーでは、観測所スタッフから、木曽観測所の所在地や歴史、敷地周辺についてスライド・動画を用いて説明していただきました。木曽 105cm シュミット望遠鏡のあるドームからビデオ中継を繋ぎ、リモート見学を行いました。生徒は口径 105cm もの大きな望遠鏡が実際に動く迫力のある様子を見ることができました。また、一般公開されている展示室から、現在木曽 105cm シュミット望遠鏡に取り付けられている広視野 CMOS カメラ Tomo-e Gozen に至るまでの観測装置の変遷についても説明していただきました。

1 時間ほど夕食のための休憩をはさみ、日が暮れた 19 時から、シュミット望遠鏡観測中継を行いました。班長から観測の流れについての説明を受けた後、観測を見学しました。Zoom や slack を通して生徒から観測してほしい天体のリクエストを聞き、それらの天体についても観測を行いました。天候に恵まれたことから、予定していた時間を最大限活用して、NEOWISE 彗星、M3、M16(わし星雲)、M51(子持ち銀河)、M57(リング星雲)、M87、M101(回転花火銀河)を観測することができました。観測中継で得られた観測データは今後生徒が個々に解析できるようにお土産として配布されました。

観測中継で得られた M51 のデータ
観測中継で得られた M51 のデータ

【2日目】
2 日目からは 4 つの班に分かれ、各班 TA2 名、生徒 4-5 名での活動になりました。今回は「暗黒星雲の正体を探れ!」の研究テーマのもとで、事前に観測した暗黒星雲付近のデータの解析を行いました。得られた生のデータにはデータを乱すノイズが含まれています。2 日目午前中は、このノイズを取り除く一次処理と呼ばれる解析を行いました。事前に配布した解析の手引きをもとに TA から説明を受けた後、各自のパソコンにインストールした解析ソフト Makali’i を使って自分の手で一次処理を行いました。わからないところがあった際は、TA に質問しながら作業を進めました。

昼食のための休憩をとった後は、暗黒星雲の近くにある恒星の測光を行いました。測光とは、1 つ 1 つの星の明るさを測定することです。観測データには 500 個以上の星が写ったので、1 人 100 個の星を測光することを目標に、班員で手分けして測光を行いました。g、r、i バンド(順に青、黄、赤の光のみを通すフィルターを通った光の波長)で観測したデータすべてについて測光を行う必要があり、時間のかかる大変な解析でしたが、集中して行っていました。


【3日目】
3 日目は、解析の続きと考察を行いました。2 日目に測光した結果から、それぞれの星の等級を計算しました。異なるフィルターでの等級の差(横軸に青色光と黄色光の強度比である g-r、縦軸に黄色光と赤色光の強度比である r-i)を求め、結果をプロットして二色図と呼ばれるグラフを作成しました。理論的に計算された一般的な星の色の二色図も作成し、各班でこの理論曲線と自分たちで解析した結果を比較しながら、この図から何がわかるのか、暗黒星雲の正体は何かを議論しました。その内容をもとに TA が発表スライドを作成しました。発表会では、各班の TA がどのような議論が行われたかを報告しました。その後、班長から講評をいただき、記念写真を撮影して、3 日間の銀河学校は閉校となりました。

閉校式後も各班に分かれてしばらくおしゃべりをし、銀河学校の終了を惜しみました。残念ながら、木曽観測所に集まるこれまでの銀河学校とは違う形式となりましたが、天文学の研究に触れてもらう機会を少しでも設けることができて良かったと思っています。

(記:大島・大村・島田)

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