日時 | 2021/12/11(土) |
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場所 | 松江市市民活動センター市民交流広場・会議室 |
対象 | 公開イベント |
担当者 | 石川,田中,照井,中野,丹羽,安田,大村,島田,嶋田,妹尾,中西,米村 |
Science Station (以下、SS)では、毎年、島根県立松江北高等学校と連携して「サイエンスカフェ in 松江」というイベントを開催してきました。 このイベントは、カフェのような場所でお茶をしながらサイエンスについて語らうことを目的とするものです。 例年と異なり、ペットボトル飲料を入場時に配布する、提供するお菓子は個包装のものに限定する、座席の配置については距離間に留意して設定する、などの感染症対策がとられました。 今年は松江北高校とSSが共催する形で、SSメンバー2人がトークを行った他、松江北高校理数科の生徒さんたちが研究発表を行いました。
このトークは、「岩⽯・鉱物と地質」「岩⽯・鉱物と宇宙」「岩⽯・鉱物と⽣物・海」という3つのテーマのもと、岩⽯・鉱物からどのようなことがわかるのか、具体例の紹介を中⼼に⾏われました。写真による紹介だけでなく、岩⽯・鉱物の実物の展⽰も⾏いました。
「岩⽯・鉱物」と聞くとあまり⾝近でない印象があるかもしれませんが、建物の壁や宝⽯、化粧品など私たちの周りには実はたくさんの岩⽯・鉱物が使われています。そんな岩⽯の種類は採取された⼟地の特徴(地質)と深く関わっており、街中で使われている岩⽯を⾒ることでその⼟地の地質を知ることができます。また、探査機などによる岩⽯採取や望遠鏡での観測により宇宙の岩⽯・鉱物も調べることができ、どのように太陽系が今の姿になったのかを知る⼿がかりになります。さらに、⽣物の活動によって作られた岩⽯・鉱物からは、昔の⽣物の活動や海の温度を調べることもできます。
トークでは、岩⽯・鉱物の⼊⼿⽅法や、実際に採取に⾏った時の体験談もありました。トークを⾏った松江市周辺の地質や岩⽯の種類の紹介もあり、今回の内容をより⾝近なものとして感じてもらえたのではないかと思います。
岩⽯・鉱物は⾼校であまり扱われない分野ですが、岩⽯・鉱物から、⼀⾒関係していないように思える宇宙や⽣物の情報を得られるということに驚いている⽣徒も多かったようです。トーク後に多くの⽣徒が岩⽯・鉱物の実物を⾒に集まり、興味深そうに観察したり触ったりしている様⼦が印象的でした。今回のトークで普段あまり学ばない分野の話に触れ、新たに興味を持ったり視野を広げたりすることに繋がってもらえれば幸いです。
このトークでは、普段目にする可視光線とX線の性質の違いや宇宙をX線で観測する方法について解説し、観測対象となる高エネルギーな天体について紹介しました。また、トーク後半では実際に天の川銀河中心部のデータ解析を実演し、X線が教えてくれることを直に体感してもらいました。
テーマにあるX線は電磁波の一つで、ガンマ線の次に波長が短く高エネルギーの電磁波です。レントゲンによるX線の発見に始まり、太陽から放射されたX線の初観測などが続き、少しずつ天文学に応用されるようになりました。X線の特徴的な性質は透過性の高さであり、日常生活では空港の手荷物検査や医療分野でのレントゲン写真などに利用されています。 宇宙には高エネルギー、すなわち高温の領域がたくさん存在し、それらからやってくるX線を観測することができます。トーク中では、よく知られている超新星爆発やブラックホールがX線を放射する天体であることや、最も近い恒星である太陽からも太陽フレアという現象に伴ってX線が放射されていることを紹介しました。 宇宙の様々な場所から来るX線は地球の厚い大気によって吸収されるため、地上で観測することができません。そのため、観測機器を宇宙へ打ち上げて天体を観測する必要があります。地上からは全く見えず想像もできないような激しい宇宙の様子を見ることができるといった点にX線天文学の醍醐味があるといえるでしょう。
トーク後半ではデータ解析の実演が行われ、銀河系中心にあるブラックホール(Sgr A*)とその近傍にあるX線で輝くガス雲を観測したデータから、過去のブラックホールの活動を推定しました。ブラックホールとその近傍のガス雲の距離が過去の時間に対応し、ブラックホールの活動度の変化を異なる距離にあるガス雲の輝きの違いとして一枚のスナップショットから得ることができます。生徒達はどのように解析を進めているのか興味深い様子でスクリーンを見ていました。
生徒だけでなく先生からも質問が出るほどに奥が深い内容であり、観覧された方々にX線天文学の面白さをしっかりと伝えられたのではないかと思います。可視光線以外で見える宇宙の姿や、今回紹介したブラックホールなどの天体について興味を持ってもらえれば幸いです。
本イベントは島根県立松江北高等学校と共催で行い、同校の先生方に多くのご協力をいただきました。厚くお礼申し上げます。