日時 | 2021/3/26 - 3/29 |
---|---|
場所 | オンライン開催 |
対象 | 生徒24名(中学3年生~高校3年生) |
担当者 | 高橋*、新納*、大島、坂井、杉山、直川*、大村、田中、石川、岡本、照井 (*印は Science Station 以外のスタッフです) |
長野県にある東京大学木曽観測所,及びオンラインにて銀河学校2021を開催しました。 例年は参加者全員が東京大学木曽観測所に集まり開催していますが、 今年は新型コロナウイルス感染症の影響で昨年に引き続きオンライン形式での開催となりました。 班長1名と TA(ティーチングアシスタント) 6名が円滑な運営のため木曽観測所から、24名の生徒を含む他の参加者は各自の家から参加しました。
Web 会議システム Zoom を用いてオンライン上に集まり、ブレイクアウトルームを用いて班ごとの解析や議論を行いました。 さらに、参加者全員がチャットツール Slack に参加し、情報共有はもちろん、お昼休憩中や夜の時間にも気軽に質問や雑談ができる環境を整えました。 またデータの共有には Google ドライブを用いており、 複数人で同時に編集ができる Google スプレッドシートや Google スライド、Google ドキュメントといったサービスも効果的に活用して解析を進めました。
10時から開校式を行い、その後自己紹介を行いました。 自己紹介では事前に準備したスライドを画面共有しながら進めていき、趣味や写真やイラストなど、個性あふれる自己紹介となり非常に盛り上がっており、 一般に交流が難しいとされるオンライン形式でありながらも交流の深まる良い幕開けとなりました。
次に「天体観測の入り口」というテーマで、天文学の研究の流れや、研究で大事なことについての講義が行われました。 生徒側に自由に意見を発表してもらうような場面では積極的に発言が出ており、今後の解析に向けて自由に発言し合えるような雰囲気も作られていったように思います。
続いて昼休憩をはさんで行われた木曽観測所ツアーでは観測所スタッフから、観測所の歴史や周辺についての講義、動画形式での観測所施設の紹介が行われました。 また、実際に木曽 105cm シュミット望遠鏡のあるドーム内からビデオ中継を繋ぎ、リモート見学も行われました。 画面越しではありますが、生徒は 105cm シュミット望遠鏡やドームが実際に動いている様子を見ることができました。 さらに一般公開されている展示室からもビデオ中継を繋ぎ、過去に 105cm シュミット望遠鏡に取り付けられて利用されていた観測装置についての説明も行われました。
観測所ツアー終了後は今回のテーマである「銀河系測量」について説明が行われました。 銀河面方向の画像と銀河面に垂直な方向の画像に写っている星の個数や明るさから、銀河系の厚みを推定することを最終的な目標としています。 説明では銀河座標系や等級といった背景知識の説明から、今後行っていく解析作業の大まかな流れについても説明がなされました。
その後 TA 2名、生徒6名の4つの班に分かれて、簡単なアイスブレイクの後に観測のためのレシピ作成を行いました。 観測レシピとは観測時に望遠鏡に入力するための命令文が記入されたファイルのことで、望遠鏡を向ける位置や撮影時の露出時間といったような情報を記入する必要があります。 各自お気に入りの天体を探し、観測に必要な天体の位置や観測する時間帯にその天体が観測可能かなどを調べました。最終的に1人1天体分の観測レシピを製作することができました。
夕飯休憩をはさんだのちに参加者は再び Zoom に集まり、シュミット望遠鏡の観測見学を行いました。 解析に利用するデータを撮影した後に、生徒が作成した観測レシピを用いてお気に入り天体の観測も行われ、撮影画像を画面共有で共有しながらバーチャル観望会が行われました。 銀河や星雲など様々な天体を観測することができ、レシピを作成した生徒や班長、TA から解説や質問も飛び交い、充実した時間になりました。 お気に入り天体の観測データは後日生徒にお土産として配布されました。
2日目からは1日目後半と同様に4つの班に分かれて解析作業を進めていきました。 1日目の観測で得られた生のデータにはデータを乱すノイズが含まれています。2日目の午前中は、このノイズを取り除く一次処理と呼ばれる解析を行いました。 事前に配布した解析の手引きをもとに TA から説明を受けた後、各自のパソコンにインストールした解析ソフト Makali'i を使って各自の手で一次処理を行いました。 わからないところがあった際は、TA に質問しながら作業を進めました。
昼休憩をはさみ午後には、まず班長2人に、日頃行っているそれぞれの研究の目的や特徴、観測の手法などについて講義していただきました。 装置開発や重力波など一般的な天文学とは違った視点からのアプローチの話も多く、とても良い刺激を得たと思います。
講義の後には引き続き解析を進めていきました。午後は、午前中に作成した一次処理済みのデータを利用して、銀河面と垂直方向を撮影した画像に写っている恒星を測光していきました。 測光とは星の明るさを測定する解析手法のことです。画像内に写っている大量の星を測光しました。 画像内には暗い恒星なのかノイズなのかの判断が難しいような対象もあり、各班で画面共有などを使いながら議論して、測光を進めていきました。
午前中に引き続き解析を行った後に、午後に中間発表を行いました。各班10分間で2-3日目で取り組んだ銀河面に垂直な方向についての解析の結果を報告しました。 測光時に用いた恒星とノイズの判断基準、銀河面に垂直な方向の限界等級(検出できている最も暗い星の等級)などを報告しました。 同じ解析作業ではありましたが,班ごとに異なる基準や計算方法を用いており、質疑応答も非常に白熱したものになりました。 発表方法も班によってさまざまで、班の特徴が反映された非常に多様な中間発表であったと思います。
中間発表後には銀河系の厚みを推定していくため、銀河面方向の画像の測光作業を始めました。 銀河面に垂直な方向と比べて非常に多くの星が写っているため、画像を16分割して測光を行っていきました。
夕方にはレクリエーションが行われ、解析時の班とは異なる班でゲームを行っていきました。 自己紹介をベースにしたゲームやクイズ大会が行われ、楽しい時間を過ごしました。
4日目はまず「発表の仕方」というテーマで研究発表の必要性や研究発表時に意識すべきことなどについての講義が行われました。 生徒の中には発表スライドを作ったことの無い人もおり、発表スライドのお手本という意味でもとても参考になる講義になったと思います。
続いて班に分かれ、解析の続きと考察、および発表スライドの作成を行いました。 4日目ということもあり互いによく打ち解けており、班内での議論も非常に盛り上がったものになっていました。
午後には最終発表会を行いました。オンラインでの発表会ということで、今回の銀河学校参加者や木曽観測所スタッフだけでなく、過去の銀河学校参加者なども聴講することができました。 各班短い準備時間の中でも完成度の高い発表を行っており、質疑応答も非常に白熱したものになりました。 発表会の最後には各班の結果をまとめたうえで総合的に議論する時間が設けられ、班を横断した積極的な議論が行われました。 発表会終了後には班長から講評をいただき、記念写真を撮影して、4日間の銀河学校は閉校となりました。
閉校式後も各班に分かれてしばらくおしゃべりをし、銀河学校の終了を惜しみました。 昨年と同じく、例年通り生徒が木曽観測所に集まる形式とは違う形式となりましたが,昨年の反省点などを活かし、 対面開催の銀河学校とはまた違った良さのある銀河学校を実現できたのではないかと考えています。 コロナ禍の中でも天文学の研究に触れてもらう機会を設けることができ良かったと思っています。