サイエンスカフェ in 松江 2021

サイエンスカフェ in 松江 2022

日時 2022/12/17(土)
場所 松江市市民活動センター市民交流広場・会議室
対象 公開イベント
担当者 田中,丹羽,石川,大平,島田,嶋田,妹尾,田中,照井,中西,中野,丹羽,米村

概要

Science Station (以下、SS)では、毎年、島根県立松江北高等学校と連携して「サイエンスカフェ in 松江」というイベントを開催してきました。
このイベントは、松江北高校とSSが共催する形で開催されており、カフェのような場所でお茶をしながらサイエンスについて語らうことを目的とするものです。
今年のサイエンスカフェ in 松江では、SSメンバーによるトークに加え、新たな取り組みとして午前中に小学生を対象としたイベントが開催されました。松江北高校の生徒による望遠鏡の工作教室に加え、SSメンバーによるサイエンスショーが開催されました。
午後にはSSメンバー2人がトークを行った他、松江北高校理数科の生徒さんたちが研究発表を行いました。

サイエンスショー

このショーでは、事前に申し込みいただいた小学校1〜3年生の生徒及びその保護者を対象として、科学の楽しさや不思議さを感じてもらうために行われました。SSでは松江北高校と共催し、2006年より延べ17回サイエンスカフェ in 松江を開催してきましたが、このようなサイエンスショーの実施は初めての取り組みです。

当日は司会進行を博士役に扮した米村が務め、助手に扮したSSメンバーにより、空気と音をテーマにした様々な実験を行いながら、解説を加えていく形で進められました。まずは妹尾より挨拶やSSの簡単な紹介が行われました。

次に大平より、身近な空気が持つ力をテーマにして、ドライヤーを使って物を浮かせる実験が行われました。発泡スチロール球の次に、輪っか状に繋げた風船を浮かせる実験が行われ、回転しながら浮かんでいる風船に自然と拍手が起こりました。
空気の力と関連して空気の重さについて紹介された後に、島田と嶋田よりマシュマロを入れた容器の空気を抜く実験を行いました。実験前には結果を予想するアンケートが行われ、空気を抜くことでどんどん膨らんでいくマシュマロを見ながら不思議そうな声や拍手が起こりました。

次に石川より、振り子を用いた実験が行われました。棒に異なる長さの振り子が3つ取り付けられた装置を用いて、振り子の長さによって揺れる周期に違いがあり、振り子の揺らし方によって特定の振り子のみを強く揺らすことができることを実演しました。

石川による実験の様子
石川による実験の様子

振り子に関連し、照井より、異なる長さのパイプを叩く実験が行われました。叩いた時の音の高さがパイプの長さにより異なることが紹介され、振り子の振動と関連させながら、音が空気の振動であることが紹介されました。

照井による実験の様子
照井による実験の様子

最後に米村より、音を使った実験が行われました。石川や照井が担当した実験と関連し、異なる量の水を入れた同じ種類のコップを叩くことで、高さの違う音が演奏できることを実演しました。これらのコップを用いて、クリスマスに関連してジングルベルが演奏されました。

参加者は皆興味津々に実験に見入っていました。身近な空気や音をテーマにした構成だったこともあってか、色々な驚きもあったようです。今回のサイエンスショーを機に、科学に興味を持ってもらえればと思います。

(記: 中野)

トーク1: JWSTは見た!

講師: 田中 匠 (東京大学 理学部 天文学科 4年)

昨年のクリスマスに打ち上げられた、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)をご存知でしょうか!??

じつはこの望遠鏡、いままでは技術的に困難であった観測を可能にし、銀河研究における新しい時代をつくるといわれるほど、大きな期待を寄せています。JWSTは何を見たのか?JWSTはどんなところがすごいのか?このトークで解説していきました。

田中によるトークの様子
田中によるトークの様子

宇宙にある天体と地球の距離の測り方は、その距離や天体に応じて異なっています。遠くにある銀河の場合、宇宙自体が膨張していることによる「ハッブル=ルメートルの法則」を用います。この法則は、地球からより遠い天体ほど速く遠ざかっていることを示しており、これを用いて後退速度から距離を求めることができるのです。後退速度は天体の光を波長数ごとに分ける分光観測によって求められます。

また、銀河には渦巻き型、楕円型などさまざまな形状があります。これらの多様な銀河の形状は、銀河が年代に伴って進化した結果だと考えられています。銀河の進化には、銀河どうしが合体したり、一度不活発になった星の形成が再び活発になる「銀河の若返り」現象などが知られています。

JWSTはより遠くの銀河を高精度に観測することができるため、銀河の進化を探る研究において、重要なデータをもたらしています。トークでは、JWSTが実際に撮影した画像も交えながら、最新の成果について紹介しました。特に、JWSTでの分光観測によって、今まで発見されたなかで最も古い134.4億年前の銀河も発見されています。今後、より遠方=初期の宇宙に関するデータがJWSTによって得られ、詳細な議論が可能になることが期待されます。

トークの後は「宇宙の果てはどのようになっているのか」、「宇宙の膨張は今後どのようになっていくのか」などの質問があり、生徒たちは宇宙や銀河の進化について興味深々の様子でした。

(記: 丹羽)

トーク2:自然のかたちを読み解く科学 -アーティスティックな地学の世界-

講師: 丹羽 佑果 (東京工業大学 理学院 地球惑星科学系 修士1年)

地学は理科四科目(物理・化学・生物・地学)のなかで最もマイナーな科目であり、地学基礎ではなく地学になると履修者や履修できる高校は非常に少ないです。このようになかなかイメージの付きにくい地学ですが、生粋の地学好きである講師は「地学」のことを「自然のかたちを読み解く科学」であると考えています。本トークでは、この「自然のかたちを読み解く科学」を軸として、講師より、地学の面白さをテーマに様々なトピックの紹介がなされました。

丹羽によるトークの様子
丹羽によるトークの様子

地学を学んでいる学生の間では時折「ジオい」という造語が用いられることがあります。これは、地質学を英語にしたジオロジー (Geology) が語源で、地質学的に面白いようなことに対し感動を覚えた際に用いられることが多いです。そして、全ての「ジオい」ものには、その「かたち」を作り出した要因が存在しています。これらの要因を解き明かすことこそ、「かたち」を読み解くことなのです。

トーク後半では、岩石をスライドグラスに貼り、光が透けるように薄く削った薄片を、偏光顕微鏡と呼ばれる顕微鏡で観察した画像が紹介されました。このような観察により、岩石の中にどのような鉱物が含まれていて、岩石内部で鉱物同士がどのような構造になっているのかを知ることができます。

講師の研究グループが約 6000 m の深さの深海から採取してきた「かんらん岩」と呼ばれる分類の岩石の薄片画像が紹介されました。この研究でどのように深海底から「かんらん岩」が採取されたのかについて、実際に行われた有人潜水艦「しんかい6500」による調査時の動画を流しながら詳しく解説しました。
採取してきた領域にはプチスポット火山と呼ばれる特殊な火山があることがわかっており、この火山活動によって地下にあるプレートの一部が破片としてもたらされています。このプレートの破片が「かんらん岩」でできており、これを偏光顕微鏡で観察することで、プレートの「かたち」を読み解くことができます。講師らの研究により、プレートの化学組成や温度構造など様々な情報が明らかになりました。

トーク後には、講師が持参した標本を生徒たちは興味深く見学していました。講師と標本や地学について熱く語り合う生徒もおり、トークを通じて地学の魅力が広まったのではないかと思います。

トーク後に標本を見学する生徒たち
トーク後に標本を見学する生徒たち
(記: 田中)

謝辞

本イベントは島根県立松江北高等学校と共催で行い、同校の先生方に多くのご協力をいただきました。厚くお礼申し上げます。

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