日時 | 2013/11/16 |
---|---|
場所 | カラコロ工房 |
対象 | 公開イベント |
担当者 | 青木, 浅岡, 卯田, 櫛田, 高山, 深瀬, 穂坂, 松村, 村仲, 三戸, 山崎 |
上記の通り、「サイエンスカフェ in 松江」というイベントを開催しました。このイベントは毎年 Science Station による松江北高校出前授業と合わせて、島根県立松江北高校と共催という形で開催させていただいています。
当日は松江北高校の生徒さんの発表を含む4つのトークを行い、広く一般の方にお話を聴いていただきました。トークの概要は、以下の通りです。
「やわらかい」幾何学とは何のことでしょうか?
お話はまず普通な幾何学の説明からスタートしました。幾何学といえば、四角形や円、立方体や球などの図形の性質を調べる学問です。そこでは長さや面積、角度を勝手に変えてはなりません。しかし世の中にはそんな細かい値は気にしないという「やわらかい」幾何学が存在します。それが位相幾何学です。そこでは長さや面積、角度は自由にかえられ、グニャッと連続的に変形して移りかわる図形を同じ図形と考えます。例えば立方体はグニャッと角を丸めれば球に変形できるので同じ図形と考えます。この全く新しい考え方にお客さんの知的好奇心も刺激されているようでした。
続いて、そのことをもう少し正確に表すために多面体のオイラー数が紹介されました。オイラー数とは多面体の頂点の数-辺の数+面の数が必ず 2 になるというものです。講師から正四面体で計算すると確かに 2 になることが説明されました。具体的な例にお客さんがぐっと引きつけられていました。
では、ドーナツのオイラー数はどうなるでしょうか?会場には本物のドーナツが会場いっぱいにふるまわれ和気あいあいとした中でドーナツ実習が行われました。ドーナツを 8分割するのに四苦八苦しつつもオイラー数を数えるのをとても楽しんでいたようです。人によって答えが異なったり、講師と解釈について質疑応答するなど、大変盛り上がりました。
最後に、講師からドーナツのオイラー数が 2 ではなく 0 であること、穴が開くことで図形の本質が変わったことが強調されました。お話の後にはそのままドーナツを食べていただき、まさに「やわらかい」幾何学を体感していただけたようです。
今回のサイエンスカフェ in 松江では、共催する島根県立松江北高校の理数科 1 年生の生徒さんに発表をしていただきました。彼らは「納豆は世界を救う!」というタイトルで、我々の直面する環境問題に対して納豆を用いたユニークなアプローチを紹介してくれました。
納豆というと何と言ってもあのネバネバが特徴ですが、そのネバネバの主成分はポリグルタミン酸と呼ばれる物質です。そのポリグルタミン酸は、実は水中の不純物を沈殿させる作用を持つことが知られています。そこで彼らは、実際にポリグルタミン酸を用いた水質浄化にチャレンジしました。
カフェのトークでは一番最初に実演があり、泥水にポリグルタミン酸を加え、実際に不純物が沈殿する様子が見事に示されました。また彼らはトークに先立ち、水質の良し悪しを測る指標の一つである COD (Chemical Oxygen Demand, 化学的酸素要求量) の測定を学校の実験室で行い、見た目だけでなく定量的にも水質が改善されたことを確認しています。
一方、彼らは追加の実験を行い、ポリグルタミン酸の水質浄化作用が必ずしも万能ではないことをも示しました。泥水以外に墨汁や牛乳を薄めた水へポリグルタミン酸を加える実験をしたところ、水質は全く改善されなかったそうです。その原因として、彼らは不純物の粒の大きさの違いを指摘していました。砂の直径は 0.01mm ~ 0.1mm 程度ですが、牛乳などに溶けているタンパク質などは直径がその 100 分の 1 以下なので、泥水と同様には事が運ばなかったのかもしれません。
環境問題へ新しい方向からのアプローチを試みた発表は多くの聴衆の興味を引き、アンケートでも好評を博していました。またトーク後には活発な質疑応答が行われました。
前半は、「アナログ」と「デジタル」の違いと特徴について話しました。よく耳にする言葉ですが、意味を正確には知らないまま使っている人も多いと思います。「虹は何色の色で構成されているか」を具体例に使って、クイズ形式にしてみなさんにも考えてもらいました。
後半は、「アナログ信号」と「デジタル信号」の間にある変換について話しました。私たちの身の回りにある電子機器にも、この技術は使われていますが、現在も完成した技術ではなくより高い性能を目指して研究が続けられている分野でもあります。ΔΣ変調器型と呼ばれる A-D 変換器を具体例に話しました。後半は高校生には難易度が高かったかもしれませんが、その後の空き時間などでも積極的に質問をしてくれる方達がいて、非常に嬉しかったです。
写真乾板をご存知ですか?今回は東京大学木曽観測所にあるシュミット望遠鏡の観測装置の歴史について、また木曽観測所のシュミット望遠鏡とハワイ観測所にあるすばる望遠鏡の特徴と比較について説明しました。
まず写真乾板とは天板ガラスに感光乳剤を塗ったものであり、いわゆるフィルムのようなものです。木曽観測所では開所当初の 1974 年から 1998 年まで使われていましたがその後、CCD カメラが主流となり、1998 年から 2012 年までその一種である「2KCCD」が使われていました。会場には、木曽観測所で撮影された M45 の写真乾板や、2KCCD が展示されとても好評でした。
シュミット望遠鏡とすばる望遠鏡では、目的天体の探し方に違いがあります。木曽観測所のシュミット望遠鏡の最大の特徴は広い視野を一度に撮影できることです。例えば、バックを持っている女性を探す時シュミット望遠鏡は視野全体をみて捕らえることますが、すばる望遠鏡ではまずバックを探し次にバックをもっている人が女性であるかどうかをみる手法をとります。
望遠鏡の原理、構造など専門的なものを除き、例を出して概要を説明しており理解が深まると同時に時折説明にユーモアを交え、会場から笑い声が聞こえてくるなど終始楽しい講義でした。
本イベントは当日、山陰中央新報様に取材をしていただきました。11 月 20 日付けの紙面にて「実験結果わかりやすく松江でサイエンスカフェ高校生、研究者が解説」というタイトルで紹介されています。詳しくはメディア掲載情報のページをご覧ください。
本イベントは島根県立松江北高等学校と共催で行い、同校の先生方に多くのご協力をいただきました。厚くお礼申し上げます。