日時 | 2013/11/15 |
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場所 | 島根県立松江北高等学校 |
対象 | 普通科および理数科の 2 年生 140 名 |
担当者 | 青木, 浅岡, 卯田, 櫛田, 高山, 深瀬, 穂坂, 松村, 村仲, 三戸, 山崎 |
島根県立松江北高等学校にて、出前授業を行いました。
今回は「ゲーム理論」「経営工学」「天体観測」「ユーザインターフェース」「電子顕微鏡」という色とりどり の 5 テーマについて授業を開講しました。概要は次の通りです。
担当講師は各々のテーマについて実習を交えつつ丁寧に解説し、また大学の様子の紹介なども行いました。 以下、それぞれの授業について詳細をレポートいたします。
卯田は、ゲーム理論に関する講義を行いました。講義の前半では、「特殊じゃんけん」と「スポーツにおけるゲーム理論」、休憩を挟んだ後半は、「チョコを使ったゲーム」を行いました。実際に体験してもらうことで、ただ説明をするよりも理解や納得のしやすい形で講義を進めることができました。簡単な自己紹介の後に、「特殊じゃんけん」を行いました。勝ち方に重みをつけることで、運任せではなく、確かな戦略を持って臨むことの重要性を教えました。「スポーツにおけるゲーム理論」では、野球の投手と打者の戦略について考えました。非常に難しい内容になりましたが、一生懸命考えてくれました。休憩を挟む前に、大学生活に関する話を 10 分ほどしました。自身の大学 1 年時の時間割などを見せ、大学で学ぶ物理の話などをしました。生徒の勉強の刺激になってくれればと思います。
「チョコを使ったゲーム」では、生徒を 4 人ずつのグループに分けて、どのグループが最大利益をあげられるのか、グループ内では誰が最高利益をあげられるかを競いました。ゲームの途中で解説を挟んだことで、ゲームの進行に最初は戸惑っていた生徒たちも、このゲームのポイントがどこに有るかを見つけ、より多くの利益を得られるように取り組めました。「囚人のジレンマ」モデルと呼ばれるこのゲームを通じて、それぞれがどのような行動を取ることにより全体としての利益が最大になるのかということについて学ぶことができたと思います。
高校生では触れる機会のない「ゲーム理論」という一見わかりにくい内容だったが、ゲームを通した講義ということもあり、戦略的思考のトレーニングを体験してもらうことができたと思います。
高山はビールゲームを通じてサプライチェーンマネジメント・ロジスティクスとは何かを学ぶ授業を行いました。授業の初めに生徒にはなじみのない経営工学の紹介を行うことで、進路の一つとして経営工学があることを示しました。続いて、サプライチェーンマネジメントの概要について現実世界の例を示しながら説明を行いました。
次に実際にマネジメントを体感するため、ビールゲームを行いました。初めてのビールゲームと複雑なルールに戸惑いつつも、競争の形式をとったため、生徒たちは白熱して取り組んでいたようでした。回数を重ねていくうちにコツをつかんだ生徒もいました。
最後に、ゲーム中に発生した問題について解説を行いました。今回の授業を通し、サプライチェーンの全体を最適化するには、全体のモノの流れだけではなく情報の流れも管理しなければいけないことを体感していただけたと思います。
国立天文台すばる望遠鏡を使うと、きれいな天体写真が撮れますが、携帯電話についているカメラでは、どうしてきれいに撮れないのでしょう。そのような疑問から授業はスタートしました。
生徒のみなさんが、すぐに思いついたのは、すばるの口径が 8.2 メートルと圧倒的に大きいいことでした。口径が大きければ、同じ露出時間でも、よりたくさんの光が集められます。さて、 8.2 メートルとは、一体どのくらいの大きさなのでしょう。それを実感してもらうために、生徒のみなさんに手をつないで輪を作ってもらい、その大きさを再現してもらうことになりました。
最初は、大きな教室いっぱいになるくらいの大きな輪が出来ましたが、もっと小さいはずだということになり、やがて、このくらいだろうという大きさに落ち着きました。実際に巻き尺で測ってみると、ほぼ同じ大きさでした。そして、あらためて、すばるの大きさを実感しました。その後、講師から検出器の感度がいいこと、人工光の影響を受けない環境にあることなどの説明が続き、専門的な光学の話に出てくる回折限界について紹介されました。この性質のため、小さな口径のカメラでは、どんなに光量を増やしても、細かな構造を見ることが出来ないことが説明されました。
授業の終盤では、現在の天文学の主要テーマである、系外惑星探査について説明がありました。圧倒的な光を放つ恒星のそばで、暗く光を反射する惑星を見つけることは困難をきわめます。この例として、生徒のひとりに演劇で使われる照明のそばに立ってもらいました。照明を向けられた生徒のみなさんからは、立っている生徒の顔が見えません。暗い惑星を見つけるために、どうしたらいいのか、それを克服する観測方法と、その成果について説明がありました。授業後には、何人かの生徒が、講師のもとへ質問しにきました。全体的に、普段聞けない、専門的な話を聞けて、満足している生徒のみなさんの様子がうかがえました。
工学の 0 時間目として「ユニバーサルデザイン」をテーマに授業が行われました。「ユニバーサルデザイン」とは全てのヒトが使いやすくなるようにデザインされたモノのことです。
はじめに工学とはなにか?とうことで教室の中にある工学に関わるモノを探してもらい、意外と様々なものが工学に関わっていることを実感してもらいました。また普段の生活で「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」の五感から様々な情報を得ていることから、情報の発信源が1つの感覚だけでなく複数の感覚情報を得られるように工夫して製品を作っている事例を見て、身近なユニバーサルデザインについて学びました。さらに IT のユニバーサルデザインとも言えるユーザーインターフェースについて学びました。今まで使っていて気が付かなかった事ばかりで、驚きの連続、使いやすいものを作る難しさを感じました。
最後に松江北高校の HP をユニバーサルデザインの観点からパソコンで表示したときスクロールしなくて済むことを仕様とし、個々によりよいデザインを考えてもらう実習を行いました。短い時間の中で生徒たちはユニバーサルデザインについて学びつつ、様々な個性あふれる作品が出来上がりました。
授業のまとめとして、「より多くのものに満足しないで不便な点を探して欲しい」というメッセ―ジを生徒に伝え、授業を終えました。
原子はどのような構造をもち、どのような振る舞いをすると思いますか?そもそも原子は直接みることができないと思いますか?そんなことはございません。今回、山崎は原子を見ることができる最新の顕微鏡「走査型トンネル顕微鏡」について、そしてそれによりわかった原子の構造や特性について出前授業を行いました。「走査型トンネル顕微鏡」とは、顕微鏡の先端部品である探針を試料表面の近傍まで移動させ、その間で生じるトンネル電流により原子の配列を認識するというものです。この技術により今まで理論上の構造であったベンゼン環の六角形や DNA のらせん構造なども実際に可視化できるなどの功績を収めています。
授業では最初に本題の導入として簡単に化学について触れた後、原子とはどういうものか、またその大きさについて身の回りのものと比較して説明しました。次に、「走査型トンネル顕微鏡」の仕組みについて実物の探針を生徒一人ひとりが見られるよう席に回しながら説明すると、生徒たちは興味を示していました。その後、実際にこの顕微鏡で撮影された原子拡大プリントを配布し生徒たちは原子の配列にどのような規則があるか気づいたことを黒板に書いて発表しました。
授業の雰囲気は活発で意見交換をしたり発表が多く出たりと生徒たちはとても意欲的でした。また、どの意見も鋭い観点を持った内容でした。後半は観測によりわかった原子の波動性について取り上げました。授業全体はメリとハリのある流れで生徒たちも積極的に授業に参加していました。授業最後には、講師へ質問する姿も見られました。