NPOサイエンスステーション
   −出前します、最先端の科学の授業−

May 09, 2005

すばる望遠鏡による観測データの解析

 先日すばる望遠鏡(*1)で観測したデータを、ここ何日かでゴリゴリ解析しています。このとき観測した天体は、おうし座方向にある生まれたてのお星さま。「生まれたて」と言っても、年齢は300万歳くらいなんですけどね。一般に年齢が100万歳前後の星の周りには、ガスやダスト(固体微粒子)が円盤状に存在していて、これらが将来惑星に成長すると考えられています(というわけでこの円盤を「原始惑星系円盤」と呼びます)。このときは、波長が10ミクロンくらいの中間赤外線という光(人間の目には見えない光です)で分光観測(*2)を行い、原始惑星系円盤中の物質の組成を探るというのが目的でした。
 生データから観測装置の感度ムラやら地球の大気の影響やらをできる限り除去する必要があり、作業はなかなか複雑で大変です。露出時間がたかだか数分のデータを処理するだけで、丸2日間もかかりました。とは言ってもまだ科学的に意味のあるデータにするための下準備が済んだだけで、このデータをこれからどう料理し、どう解釈するかが本当の勝負。結果が出るまではまだまだ時間がかかりそうですが、観測した天体がどんな素顔を見せてくれるのか、いまからとても楽しみです。

(*1) 日本が誇る光・赤外線用望遠鏡で、口径が8.2メートルもあります。観測の邪魔になる水蒸気が少なく、晴天率も良いハワイ・マウナケア山山頂にあります。標高が4200メートルもあるので、観測中は大変辛いです…。

(*2) プリズムのようなもので光を波長ごとに分解する観測手法のこと。基本的に物質は組成によって固有の波長の光を放出(場合によっては吸収)するため、天体からの光を分光することで、その天体にある物質の種類や性質を推定することが可能になります。
Posted at 11:49 in fujiwara | WriteBacks () | Edit
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